南八ヶ岳のテント泊登山、初日は西岳に登頂したあと青年小屋でテント泊するところまでお届けしました。今回は、2日目、権現岳に登頂したあと、青年小屋でテントを撤収して、観音平に下山するところまでをお届けします。
1日目の西岳・編笠山の登頂と青年小屋のテント泊の様子は、以下の記事をご覧ください。
【権現岳】雲海と山頂からの絶景、高山植物を楽しむ権現岳ピストン
青年小屋にテントを置いて権現岳にピストンしました。途中、見事な雲海を眺めることができましたし、岩陰には高山植物。岩場・鎖場が続くスリリングな登山を楽しみつつ、山頂からの絶景も満喫することができました。
朝焼けを眺めたあと権現岳に向けて出発!
午前4時過ぎには明るくなってきて目が覚めてしまいました。日の出の時間が午前5時前なので、カメラをもってテントを出て、青年小屋前へ行ってみます。
日の出の方角は山影に隠れているのと、東の方は雲が多めだったので、日の出を見ることはできませんでした。が、朝焼けの中に聳える富士山の風景が素晴らしかったです。
よく見てみると、富士山の手前、甲府盆地は雲海になっているようです。
テントに戻って、軽い朝食を摂りました。お湯を入れて3分でできるパスタとインスタントコーヒー。フリーズドライと違って3分でできるので、テント泊時の朝食によく食べることにしています。
この日、朝は曇り、午前中から日中にかけてだんだん晴れてくるという予報だったので、のんびりスタートでいいかなと思っていました。
ところが、テント場からギボシや権現岳のほうを見てみると、雲がかかっている様子はなく、山頂まできれいに見渡せます。それに、先ほどの雲海! 早くスタートすれば、山頂近くから雲海が広がっている様子を見られるかもしません。
ということで、予定より早いですが、すぐに支度をして、出発することにしました。持参してきたヘルメットを装備して登山開始です。
樹林帯を登って雲海が広がる「のろし場」へ
青年小屋のトイレの横にある登山口から午前6時前にスタート! 最初は、樹林帯の中を真っすぐに登っていきます。まだ朝日が当たらないので、少し薄暗いですが、足元は見えているので問題ありません。
権現岳といえば、西ギボシ~東ギボシの岩場や鎖場が核心部なのですが、この樹林帯の登りも侮れません。危険箇所はないですが、だんだん傾斜が急になっていきますし、上のほうは岩が多くなってきます。
樹林帯を20分ほど登り続けて「のろし場」に到着。一気に視界が開けて、「狼煙」を上げるにはぴったりの場所です。
目の前にはギボシ、その向こうに権現岳が見えています。
そして、ちょっと期待してきた雲海! 甲府盆地に広がる雲海が見事です。右側の山並みは南アルプスです。
そして富士山! 雲海の向こうに聳える富士山が堂々としていますね。
雲海の下の町ではどんよりとした曇り空なのに、山の上から絶景! 登山をしていると、地球の立体感を感じることが多くあります。
西側の景色です。手前の街並みは富士見町~原村~茅野市あたりでしょうか。奥の山並みは中央アルプス。中央やや右側には御嶽山まで見ることができました。さらに右側は北アルプスかな。
高山植物が咲く岩場・鎖場を超えて西ギボシへ
のろし場から先は、ガレ場や岩場・鎖場が続きます。まずは手前に聳える西ギボシを目指します。
岩陰には高山植物が咲いています。これはカワラナデシコ?
西ギボシへ向かう途中にある鎖場です。西ギボシ~東ギボシの間には鎖場がいくつもありますが、岩場を登るようなところよりも、斜面をトラバースするところに、滑落防止のために鎖がかけられているところが多いです。
あちこちで咲いていたチシマギキョウ。緊張が続く岩場・鎖場に咲いていて、心を落ち着かせてくれます。
夢中になって岩場や鎖場を進んでいるうちに、いつの間にか西ギボシのピーク付近に到着していました。振り返ると、西岳と編笠山、その間に青年小屋が見えています。先ほど通過してきたのろし場も見えますね。
西ギボシのピークを超えると、今度は東ギボシが見えてきます。その向こう、ピークに大きな岩がいくつか見えるのが権現岳です。
核心部を抜けて東ギボシへ
西ギボシ~東ギボシの間はこのルートの核心部。鎖場や岩場が続きます。気を抜かずに進みましょう。
岩陰に咲くミヤママンネングサ。
山腹の斜面をトラバースするように進みます。山側に鎖がついていますが、これは右側の斜面下へ滑落しないようにするためのものでしょう。足場はしっかりしていますし、道幅も十分にあるので、それほど恐くはありませんでした。
あちこちで見かけたチシマギキョウ。高山植物は、スリルのある登山道で、癒しを提供してくれます。
東ギボシの斜面を登る鎖場。この鎖場が一番長かったと思います。鎖はありますが、鎖の左側の方が傾斜が緩やかで、足場もしっかりしているので、鎖を使わなくても登れました。鎖を使う場合は、右側の急斜面に落ちないように注意です。
鎖場が続きます。傾斜はそれほどではなく、足場もしっかりしているので、ゆっくり登っていけば問題ありませんでした。ところどころにある赤いペンキの〇印や矢印を目印に登ります。
アタックザックだけで身軽になったせいか、思ったよりもサクサク登れました。途中ですれ違った、赤岳のほうからやってきたテント泊装備の方は、大変そうでした。
目の前に見えるのが東ギボシです。青年小屋から登ってくると、東ギボシの山腹をトラバースしてこの場所に出ます。東ギボシ山頂への道があったのですが、見逃してしまいました。権現岳の山頂を踏んでから、帰りに寄ることにして、先を急ぎます。
権現小屋の横を抜けて権現岳山頂へ!
西ギボシ~東ギボシの岩場・鎖場エリアを抜けると、東ギボシと権現岳の鞍部に出ます。ここから先は、特に危険箇所はありません。
東ギボシと権現岳の鞍部からの眺めです。登っている間に、だいぶ雲海が消えてしまいました。奥には南アルプスの山々がくっきり見えています。
権現小屋が見えてきました。残念ながら、今年も休業とのことです。その向こうに見える岩がいくつか連なったところが権現岳の山頂です。権現小屋の横を抜けて、稜線に上がります。
稜線に上がりました。やや風が強めです。ここまでくれば、権現岳の山頂は目の前です。
ここは、キレットを超えて赤岳へと続く縦走路の分岐でもあります。いつか、キレットを超えて赤岳まで歩いてみたいものです。
権現岳の稜線には、ミヤマダイコンソウが咲いていました。強風に耐えて咲く高山植物、たくましいですね。
午前7時過ぎ、権現岳の山頂標柱のあるところに到着! 先ほど見えた岩が連なった場所の下にあります。
先を歩いていたソロの方が、山頂の岩から降りてきました。聞いてみると、簡単に登れるそうなのでチャレンジしてみます。
山頂の岩です。古びた鉄剣がささっています。
権現岳は、八ヶ岳の山岳信仰の中心となってきた山です。山頂には八雷神(やついかつちのかみ)が祀られていますが、「八ヶ岳」という呼び名は、この「八雷神」に由来しているという説があるそうです。もしそうだとしたら、権現岳が八ヶ岳の「主峰」だったのかもしれませんね。
権現岳山頂からの絶景です。編笠山に西岳、その向こうには雲海が晴れて、麓の町が見えてきました。
北側の眺望です。右側が赤岳、左側は阿弥陀岳、その間に横岳や硫黄岳の稜線が見えています。鋭角的な赤岳や横岳の険しい山並みが印象的です。
山頂からの景色は素晴らしいのですが、足場が狭いですし、風も強いので、ゆっくり景色を楽しむ感じではありません。ささっと写真だけ撮って、岩から下りました。
権現小屋前で休憩して東ギボシ山頂へ!
権現岳山頂から、赤岳への分岐まで戻ってきました。少し下って、権現小屋の前にあるベンチで休憩することにします。
小さな山小屋ですが、眺望は抜群です。小屋の前にある木のベンチで休憩します。
権現小屋のベンチに座ると、目の前に南アルプスの山並みを一望できます。左から白峰三山、甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳と、南アルプス北部の名峰がずらり!
権現岳の標高は2,715メートル、南アルプスは3,000メートル峰が並びますので、南アルプスの方が少し標高が高いです。
編笠山と南アルプス。標高2,524メートルの編笠山よりは、こちらのほうがだいぶ標高が高いことがわかります。
少し休憩したあと、青年小屋に戻りますが、先ほどスルーしてしまった東ギボシに登ってみます。よく見るとちゃんと道がついていますね。
東ギボシの山頂です。それほど広くはないですが、足場はしっかりしているので、景色を眺めたり、写真を撮ったりするのに良さそうです。
赤岳や阿弥陀岳が目の前に見えます。左側の赤岳、キレットを超えていくと、こちら側に見えるあの尾根を登っていくのでしょうね。あれはかなりキツそう……。
富士山と甲府盆地、右側には南アルプス。手前に見えるピークは三ツ頭でしょうか。
北西側には茅野や諏訪の町と、諏訪湖が見えます。
東ギボシの山頂からの眺望は、まさに360度! 権現岳の山頂ではゆっくり景色を眺めるのが難しいので、東ギボシの山頂から眺めるのがおすすめです。標高2,700メートルで、権現岳とは15メートルしか変わりませんし。
青年小屋に戻りテントを撤収して下山
のろし場まで下ってきました。朝は一面の雲海でしたが、今は小さな雲が少し浮かぶだけになっていて、麓の町がよく見えます。
ずいぶんのんびりしてしまいましたが、青年小屋に戻ってきても、まだ午前8時40分。少しテントで休憩してから下山しようかと思ったのですが、下っている間に日が照ってきて、テント内は灼熱地獄! 仕方がないので、早めに撤収します。
撤収完了。権現岳を往復している間に、朝はびしょびしょに濡れていたレインフライも、すっかり乾いていました。テントが乾いていると撤収がラクでいいですね。
青年小屋前のテーブルで行動食を食べて、水分補給をします。これから権現岳に登るという方と少しお話。朝早くから登れば、十分に日帰りできますね。
午前10時頃に青年小屋を出発。青年小屋からは編笠山の山頂を通らずに観音平へと下るルートを選択。いわゆる巻道ですが、編笠山山頂直下の急登よりはマシなものの、岩が多くて、歩きやすい道とは言えません。危険箇所がないのはありがたいですが……。
1時間弱で押手川に到着。編笠山山頂への道と、青年小屋への巻道が合流するところです。広場になっているので、休憩には良いポイントですね。
雲海。ベンチで休憩して、水分補給していきます。標高が下がってくると、だんだん暑くなってくるので、水分補給は大事です。
12時過ぎに観音平に到着。タクシーを呼ぶために電話をしてから、着替えたり荷物の整理をしようと思っていたら、すぐ近くにいるので5分ほどで到着するとのこと。急いで着替えだけ済ませて、タクシーに乗り込みました。
観音平に下山してから50分後には、特急あずさの乗客に。しっかり駅弁とビールも購入したので、ガラガラの列車の中でひそかに乾杯をしました。
八ヶ岳最南端の3座に登頂、テント泊装備で標高差1000メートルも何とかクリア!
ということで、八ヶ岳最南端の西岳、編笠山、権現岳の3座にテント泊で登ってきました。
編笠山は日帰りで登ったことがありましたが、西岳と権現岳は初登頂。特に、権現岳には登ってみたかったので、お天気に恵まれて良かったです。
今回、初めてテント泊装備を背負ったまま山頂を踏みました。富士見高原から西岳山頂までの標高差は約1000メートル。暑さもあって、かなり消耗してしまいましたが、何とか無事に登頂できました。
とはいえ、富士見高原から西岳への登山道は、急登がほとんどなく、岩場や鎖場などの危険箇所も全くありません。とても登りやすいコースなので、何とか登れたという感じです。急登や危険箇所があるコースをテント泊装備を背負っていくのは、まだ厳しそうだな、と感じました。体力アップと、装備の軽量化が課題ですね。
青年小屋のテント場は、日曜泊だったこともあってか、とても静かでよかったです。地面は平らでペグも刺さりますし、すぐ横に小屋がある安心感もありますね。水場は徒歩5分ほどですが、冷たくておいしい水でした。
またテント泊してみたいなと感じるテント場でした。
今回の登山装備
今回の主な装備は以下のとおりです。(消耗品、食料、細かな備品等は除く)
- ウェア類
- ドライレイヤ: ミレー ドライナミックメッシュ NSクルー
- アンダーレイヤ: モンベル ウィックロン 長袖Tシャツ
- 防寒着: ユニクロ ウルトラライトダウンコンパクト
- パンツ: モンベル トレッキングパンツ
- レインウェア上: モンベル レイントレッカージャケット(防寒着兼用)
- レインウェア下: モンベル サンダーパス パンツ
- 靴下: モンベル ウィックロンの登山用靴下
- その他、着替え類(長袖Tシャツ、靴下等)
- 登山靴: モンベル アルパインクルーザー2300
- 登山補助
- 膝サポータ: ザムスト EK-3(両膝)
- トレッキングポール: シナノ フォールダーTWIST 125
- クライミング用グローブ
- 虫よけスプレー
- ヘルメット(権現岳往復時に使用)
- 緊急用
- ファーストエイドキット
- ヘッドランプ、予備の電池
- ザック
- テント泊用: オスプレー イーサーAG60 60L
- アタックザック: イーサーAG60の雨蓋部分
- テント類
- テント: モンベル ステラリッジテント2型
- シュラフ・マット
- シュラフ: モンベル ダウンハガー800 #2
- マット: サーマレスト ZライトソルR
- 水
- ナルゲンボトル 1L(中身はポカリスエット1リットル)
- プラティパス 2L(水場での水汲み用)
- 調理器具
- クッカーセット
- バーナー、ガス缶
- ステンレスマグカップ
行動中は、ミレーのいわゆるアミアミと、長袖Tシャツの2枚で十分でした。早朝、権現岳に往復するときは寒いかなとも思ったのですが、それほどでもありませんでした。山頂付近だけは強風だったので、少し冷えました。
テント場は、夜はそれなりに冷えたので、ユニクロのウルトラライトダウンコンパクトを着ました。ダウンパンツは持っていかず、寒かったらレインウェアのパンツを履けばいいかと思っていたのですが、特に問題ありませんでした。
シュラフは、モンベルのダウンハガー800 #2しか持っていないので、これを持っていきましたが、完全にシュラフの中に入ると暑かったですね。ジッパーを開けてちょうどよいくらいでした。
水、行動食、食料などを含めて約13kg。昨年よりも1kgくらいは軽量化できたのですが、これ以上は、シュラフやザックなどの大物を軽量化しないと厳しそうですね……。今後の課題です。
以上、「【八ヶ岳】青年小屋でテント泊して絶景の南八ヶ岳3座をめぐる夏の山旅! ~権現岳登頂編~」でした。お天気に恵まれて、朝の雲海や、権現岳山頂からの絶景を眺めることができて、とても満足度の高い山行になりました。
関連記事
2021年夏に、赤岳鉱泉でテント泊して、硫黄岳~横岳~赤岳に登ってきたときの山行記です。
2020年夏に観音平から編笠山に日帰り登山した時の記録です。
コメント