東北の日本百名山、鳥海山に登ってきました。火山らしい緩やかなすそ野から、高原のような山腹、そして、山頂直下のゴツゴツとした岩場と、変化に富んだ登山を楽しめました。そして、何といっても山頂からの日本海の絶景! 海に近い山だからこその景色を眺めることができました。日帰り登山としてはなかなかハードでしたが、遠征してまで登る価値のある山だと思いました。
東北の日本百名山、鳥海山に前泊日帰り登山!
鳥海山は、山形県と秋田県の県境に位置する標高2,236メートルの山。日本百名山の一つで、美しいその山容は「出羽富士」とも呼ばれています。古くから、信仰の山として親しまれてきました。
鳥海山は火山です。最近では1974年に小規模な水蒸気爆発が発生していますが、現在は落ち着いた状態を保っています。溶岩流によって形成された山で、長くひくすそ野がとても美しい山容をしています。山腹には高原あるいは丘陵地帯のような緩やかな地形が広がっています。一方で、1801年の噴火でできた溶岩ドームが、現在の山頂「新山」を形成していて、その付近は巨大な岩が積み重なっています。山頂直下の御室小屋から山頂までは、20~30分ほどの岩登りが必要です。
今回は、前日に自宅から仁賀保駅近くの宿まで移動し、翌日、日帰りで登ってきました。
最もメジャーな登山口「鉾立」から山頂を目指す「鉾立ルート」をピストンしました。登山口となる「鉾立」は、鳥海山の北西の山腹、標高1,150メートル付近にあります。鳥海ブルーラインが通っていて、駐車場もあります。
今回の主な行程は以下のとおりです。
- 07:15 鉾立登山口 出発
- 08:40 御浜小屋 到着(小休止)
- 08:55 御浜小屋 出発
- 10:45 御室小屋
- 11:05 鳥海山山頂(新山) 到着
- 11:20 鳥海山山頂(新山) 出発
- 11:45 御室小屋 到着(ランチ休憩)
- 12:15 御室小屋 出発
- 13:50 御浜小屋
- 15:10 鉾立登山口 下山
累積標高は1,385メートル、距離は15kmと、日帰りとしてはなかなかハードでした。最初はとても緩やかな登りですが、山頂に近づくにつれてどんどん険しくなっていくので、ペース配分が重要な山でした。
鳥海山 鉾立登山口への公共交通機関でのアクセス
鳥海山の鉾立登山口へは、JR羽越本線の象潟(きさかた)駅から、乗り合い登山バス「鳥海ブルーライナー」が運転されています。
象潟駅~鉾立間で片道3,000円と安くはないですが、公共交通機関はこの「鳥海ブルーライナー」しかありません。タクシーを利用すると数倍はかかると思いますので、「鳥海ブルーライナー」を利用するのが良いでしょう。
鳥海ブルーライナーは、登山シーズン(例年6月~10月第2週)の土曜日・日曜日・祝日に運行されています。月によって運行本数やダイヤが異なります。
また、前日17時までの事前予約制になっています。Webのフォームから予約することができます。詳しくは、「にかほ市観光案内」のWebサイトをご確認ください。
東京近郊からであれば、前泊・日帰りで鳥海山に登ることができます。登山前日に、「鳥海ブルーライナー」が運行される象潟駅周辺、あるいは、周辺の町(山形側なら酒田、秋田側なら仁賀保、羽後本荘など)に宿泊します。
今回は仁賀保駅近くのホテルに前泊しましたが、以下の列車を利用しました。2022年時点では、この乗り継ぎが効率が良いと思います。
- 東京 12:40発 → 新潟 14:47着(上越新幹線 とき321号)
- 新潟 14:57発 → 酒田 17:10着 → 象潟 17:48着 → 仁賀保 17:57着 → 羽後本荘 18:08着 → 秋田 18:41着(特急いなほ7号)
新潟駅での乗り継ぎ時間は10分しかありませんが、新幹線を下りた同じホームの反対側に「いなほ7号」が停車していますので、すぐに乗り継ぎができます。
今回、下山後は後泊しましたが、下山してそのまま東京近郊まで帰ることも可能です。
- 象潟 17:31発 → 新潟 20:11着(特急いなほ14号)
- 新潟 20:23発 → 東京 22:28着(上越新幹線 とき348号)
【鉾立登山口】象潟駅から「鳥海ブルーライナー」で鉾立へ
まず、象潟駅から「鳥海ブルーライナー」に乗って鉾立の登山口を目指します。鳥海ブルーラインで標高を上げ、鉾立の駐車場に到着すると、この時点で絶景が待っています。
象潟駅から鳥海ブルーライナーに乗車
前泊していたホテルを出発して、仁賀保駅から始発の酒田行きの列車に乗車。10分ほどで象潟駅に到着しました。
駅前で少し待っていると、ワゴン車とタクシーのような車がやってきました。この2台に分散して乗車することになるようです。コロナ対策なのか、定員を半分くらいに制限しているようでした。名前を告げて、3000円を支払ってから乗り込みます。
6時20分に象潟駅を出発。内陸部へと向かい、鳥海ブルーラインの山道をどんどんと登っていきます。
ちょうど30分で、鉾立の駐車場に到着しました。海のすぐ近く、海抜ゼロに近い象潟駅から、あっという間に標高1,150メートルまで登ってきてしまいました。
日本海の絶景を眺めながら登山の準備
駐車場の横には鉾立ビジターセンターがあります。早朝のこの時間はまだ空いていませんが、すぐ横にあるトイレを利用することができます。道路の反対側にある稲倉山荘がオープンすると、そちらのトイレを利用することになります。
稲倉山荘には飲み物の自販機があります。自販機は山荘が営業していなくても使えますので、飲み物を調達するのに便利です。
鉾立の駐車場の脇にあるベンチに陣取って、登山の準備をします。目の前はこの絶景! 鳥海山は、日本海のすぐ近くにあることが実感できます。山頂から日本海までは16kmしかはなれていないのだとか。
ということで、準備万端整えて、出発します!
【鉾立~御浜小屋】眺望の開けた緩やかな登山道を登って鳥海湖の見える御浜小屋へ
鉾立の登山口からは、石段や石畳のような緩やかな登りが続きます。樹林帯はなく、最初から笹原が続くため、常に視界が開けていて、気持ちの良い山歩きを楽しめます。
鉾立登山口から登山開始! 鉾立展望台からの眺めは最高!
車道に沿って少し歩いたところに鉾立の登山口があります。ここで登山者カードを出して、登山開始です!
登山口にある案内図に、これから登る鉾立ルートの概要が掲示されています。コースタイムも書かれていますが、これによると、山頂までは5時間40分もかかります。往復で約9時間半のロングコースです。
スタートが7時15分、帰りのバスの時刻16時20分までは約9時間。休憩時間も考えると、このコースタイムよりかなり速く歩けないと、帰りのバスには間に合いません。
登山口から、少し登ったところにある展望台までは、歩きやすい石段が整備されています。展望台までは、観光客でも登れるようになっているのです。
5~6分登ると、展望台がありました。展望台からの景色はこのとおり! 鉾立の駐車場や山小屋、ビジターセンターなどが見えます。その向こうには広大な鳥海山のすそ野と日本海! 登山でなく、ドライブやツーリング、観光などで鉾立まで来られる方は、ぜひ、この展望台まで登ってみてください。
視界が開けた緩やかな登山道を登る!
展望台から先は、だんだん登山道っぽくなってきます。といっても、石が積まれて階段状に整備されているところが多く、急なところがあっても、歩きにくくはありません。
鉾立コースの登山道は、登山口から頂上まで、背の高い木に覆われた樹林帯が全くありません。登山口からしばらくは笹原の中に付けられた登山道を歩いていきます。そのため、こんなに素晴らしい景色を眺めながら登ることができます。
ただ、お天気が良ければ、ずっと直射日光を受け続けます。日焼け対策は必須です。
夏の高山植物の時期は終わってしまいましたが、秋の花が咲き始めていました。登山道の脇でよく見かけたのは、この黄色のお花。ミヤマアキノキリンソウです。
登山口から30分ほど登ったところから、振り返って撮った写真です。とても開放的な登山道で、奥にはまだ日本海が見えています。
鳥海山の長く美しいすそ野を登っているのでしょうか。前方に広がる景色も、緩やかな丘陵地帯や高原のようです。
鳥海山の山体はほとんどが溶岩流でできているそうですが、この穏やかな山容を形作ったのが荒々しい火山の噴火であったというのも面白いですね。
登山道の脇に咲く秋の花、エゾオヤマリンドウ。茎の先っぽにまとまって咲く青紫の花が印象的です。この時期は咲いている花が少ないので、この青いリンドウ系の花は良く目立ちます。
起伏の少ない高原のような「賽の河原へ」
特に疲れているわけでもないのですが、ついつい、この絶景を眺めたくて、立ち止まって振り返ってしまいます。
登山口から1時間ほどで、「賽の河原」に到着。草地の平原に岩がゴロゴロと転がっている場所です。岩が多めではありますが、「賽の河原」という言葉から感じるよりも明るいイメージの場所です。広いので休憩にぴったりです。
周囲を見渡すと、傾斜の緩い草原の斜面にも、大きな岩が点在しています。鳥海山は何度も山体崩壊や岩屑なだれを起こしているようなので、そのときに流れてきた岩なのでしょうか。
絶景を眺めながらの楽しい登り
賽の河原から先は、少し傾斜が急になるところも出てきますが、急坂は長く続かず、緩い傾斜の登りが延々と続く感じです。
賽の河原から左前方に見えていた斜面を登り、上の方に見える稜線を目指します。石畳のように石が積まれた登山道が続いているので、歩きにくくはありません。
少し登っていくと、再び日本海が見えてきます。まさに絶景! 少し下に見える岩が点在する草地が「賽の河原」あたりですが、標高が上がって、その向こうの景色も見えるようになってきます。
相変わらず石畳のように石が積まれた登山道が続きます。
登っているときも、左側を見ればこの絶景! 日本海の海岸線までくっきりと見渡すことができます。
足元に目をやると、登山道の脇には白いかわいらしいお花が咲いています。キク科のヤマハハコでしょうか。
鳥ノ海御浜神社が建つ御浜小屋へ
登り始めて1時間40分ほどで、ようやく御浜小屋が見えてきました。
御浜小屋の手前には分岐があります。鉾立登山口よりも少し南側にある大平登山口からのルートがここで合流します。
ようやく御浜小屋に到着しました。標高は1,700メートル。登山口からは、550メートルほど標高を上げてきました。緩い傾斜の登りばかりでしたが、ずっと登りなので、それなりに標高が上がっているようです。登山口と山頂の標高差でいえば、半分くらいまでは登ってきたことになります。もっとも、この後はアップダウンがあるので、累積標高では3分の1強といったところ。
鳥ノ海御浜神社の大きな鳥居です。
ここで休憩していきますが、御浜小屋を脇を抜けて、反対側(南側)へ。
御浜小屋の南側からは、鳥海湖を眺めることができます。小さな池のような湖ですが、この鳥海湖はれっきとした火山湖。約16万年前の噴火のときの火口だそうで、先ほど登ってきた鳥海山の西側の山体は、このときの噴火の溶岩でつくられているのだそうです。
こんなにこじんまりとした湖なのに、鳥海山の山体を作るほどの溶岩を噴出した火口だとは、とても思えないですよね。
鳥海湖の奥、遥か向こうにが月山が見えていました。こんな景色を眺めながら、行動食を食べて、水分補給。とても贅沢な休憩時間でした。
【御浜小屋~七五三掛】おだやかな丘陵地帯を超えて外輪山へ
御浜小屋からは、丘陵のような扇子森を超えて外輪山の一角にある七五三掛(しめかけ)へ。目の前に険しい鳥海山の山頂を眺めながら、それとは対照的な高原のように緩やかな登山道を歩きます。
眺望の良い扇子森を超えて御田ヶ原分岐へ
御浜小屋の近くで少し休憩したので、先に進みましょう。ここまで来ると、鳥海山の山頂が見えてきます。まずは、手前にある丘のような山を超えていきます。この山は「扇子森」(せんすもり)という山です。
多少、ザレたところや、大きな岩があるところもありますが、傾斜は緩やかなので、ゆっくり登れば問題ありません。
ピークの直下は大きな岩がゴロゴロしていて少し急ですが、すぐに終わります。登山道はきちんと整備されているので、危険なところはありませんでした。
このあたりが、先ほど御浜小屋から見えた丸い丘のような扇子森のピークのようです。地図には「扇子森」とありますが、道標には「御田ヶ原」とあります。目の前には、鳥海山の山頂がさらに近くに見えてきました。が、道標によると、まだ山頂まで3.6kmもあるようです。
いったん下ります。登山道の道筋を見ると、次のピークは右側から回り込むようです。その向こうには、いよいよ外輪山!
下り切ったところが「御田ヶ原分岐」です。右側は鳥海湖の南側を回り込むルートです。下山時には、右側のルートを歩いている人も多く見かけました。
振り返ってみると、先ほど超えてきた扇子森がきれいに見えました。本当に丸くて穏やかな丘のような山ですね。
八丁坂を超えて外輪山の麓にある七五三掛へ
再び登りになります。相変わらず、石畳のような道が続きます。傾斜は急ではありません。
この坂は「八丁坂」というそうです。山頂まであと2.7km。
ピークを右側から巻くように進むと、目の前に外輪山が見えてきました。明らかに、ここまでの穏やかな丘陵地帯のような山容とは異なり、険しさを感じさせます。
外輪山の下にある「七五三掛」(しめかけ)に到着。小さな広場になっているので、少しだけ休憩していきます。このあと、目の前に見える外輪山を登っていくようですが、どう見てもキツそうなので(笑)
左奥に見えているのが山頂ですが、その前に、いったん、この外輪山の稜線へ上がります。その後、その影にある千蛇谷へと下っていき、山頂に向けて登り返していきます。
【千蛇谷~御室小屋】外輪山を超えて千蛇谷の長い登りへ
七五三掛から外輪山の外側を急登し、外輪山コースとの分岐を通過。千蛇谷へと急降下したあと、千蛇谷から山腹の長い登りへ。何とか登りきると、稜線にある御室小屋に到着します。
外輪山を急登して千蛇谷コースへ
ここから先は、これまでとは違い、急な登りや下りが増えてきます。まずは、外輪山の外側を登り、外輪山コースと千蛇谷コースの分岐を目指します。
外輪山の外側の急坂を登っていきます。明らかにこれまでの登山道とは様子が違ってきます。
一気に標高が上がるため、振り返ってみると、これまで歩いてきた登山道を見渡すことができました。とても穏やかな高原のような風景です。いま登っている外輪山は岩がゴツゴツ。この変化が鳥海山の面白いところですね。
どんどん傾斜は急になります。なかなかにしんどい登りです。
左側を見ると、外輪山の内側の斜面をジグザグに下る道が見えました。外輪山コースとの分岐まで登りきったあと、あの道を下って、千蛇谷へと下りていくのです。せっかく登っても、また下ってしまうのですよね……。
ようやく千蛇谷コースと外輪山コースの分岐に到着しました。外輪山コースは、鳥海山の外輪山の稜線を歩いて行くコース。文殊岳~伏拝岳~行者岳と続く外輪山の南側の稜線を歩きます。今回は、時間の関係もあり、少しコースタイムが短い「千蛇谷コース」を選択しました。
千蛇谷へ急降下して小さな雪渓を渡る!
先ほど、外輪山の外側を登っているときに見えたジグザグな道を下っていきます。上から見下ろしてみると、かなりの傾斜! 丸太で道が作られていますが、段差が大きいところもあるので、慎重に下っていきます。帰りは、ここを登らないといけないのですよね……。
少し下っていくと、千蛇谷がよく見えるようになってきました。左側が山頂、右側が外輪山、そして、その間に続く谷が千蛇谷です。千蛇谷は、鳥海山が山体崩壊を起こしたときに、岩屑が流れ下った跡なんだそうです。今も、大きな岩がゴロゴロしています。
そして雪渓! もう9月だというのに、まだ雪渓が残っています。しかも、このあたりは標高1,800メートルほど。さすがに東北、それも日本海側の山ですね。
雪渓まで大きな岩がゴロゴロとした急坂を下ります。雪渓を横切る形になります。ほぼ平坦ですし、雪の上を歩くのも10メートルそこそこですので、滑り止めは必要ありませんでした。
雪渓を渡り切り、少し登ったところで振り返ってみました。外輪山はこの千蛇谷で切れているようで、そこに登山道が設けられているようです。雪渓の左上に見える登山道で一気に下ってきました。
しばらく、千蛇谷の左側(北側)に付けられた登山道を登っていきます。目の前には山頂付近の岩峰が見えていますが、ここから直登することはできず、千蛇谷に沿って標高を上げて行くことになります。
大きな岩がゴロゴロとした千蛇谷の様子です。その向こうにある外輪山もなかなかに険しいですね。先ほどまでの高原のようや穏やかな山容がうそのようです。
千蛇谷からの長い登りを経て稜線の御室小屋へ
しばらく千蛇谷沿いに登ったあとは、谷から離れて、山頂へ向けて山腹を登っていきます。すぐ近くに見えるのですが、これが意外と長いのです。それに、見かけよりもかなり急で、キツイです。あちこちで休んでいる人を見かけました。
登山道は、目の前に見える山頂の岩峰群を直接目指すのではなく、右側の鞍部にある御室小屋を目指します。山頂ヘは、御室小屋から岩登りがあります。
しばらく登ってから振り返ってみると、外輪山の稜線と急斜面が良く見えます。かなり険しい山であることもわかりますね。ところどころに雪渓も残っています。
だんだん傾斜が急になってきます。足元も、大きな岩が増えてきて、足を大きく上げる場面が増えてきました。かなりキツく、何度も休憩しながら登りました。
疲れて立ち止まっても、振り返るとそこには絶景が! 御浜小屋から続く一筋の登山道がよくわかります。先ほど渡ってきた雪渓も見えますね。奥の丸みを帯びた丘陵が続くエリアと、手前のゴツゴツとした険しい外輪山の様子が対照的です。
そして、山の向こうには青々とした日本海! この景色が鳥海山の醍醐味だと思います。
ようやく御室小屋が目の前まで近づいてきました。
登山道の脇には、枯れかけのアザミが。鳥海山を代表する植物、チョウカイアザミのようですが、花の時期は終わってしまったようです。8月が見ごろだそうです。
鉾立の登山口から3時間半ほどで、ようやく御室小屋に到着! ここには大物忌神社がありますが、まずは山頂を目指すことにします。
【鳥海山(新山)山頂】岩場を超えて日本海を望む絶景の山頂へ!
御室小屋から、鳥海山の現在の最高峰「新山」までは、岩場が連続して続きます。何とかこの岩場を超えて、岩峰のような山頂にたどり着くと、そこには日本海を望む絶景が待っていました。
江戸時代の噴火で形成された溶岩ドームの山頂へ
御室小屋から山頂へは、この巨大な岩が積み重なったところをよじ登って行きます。鳥海山の現在の山頂「新山」は、江戸時代の1801年の噴火の際に形成された溶岩ドームなのだそうです。
ここまでも、何度も表情を変える登山道を楽しんできましたが、最後の最後に岩場が待っていました。
一つ一つの岩が巨大で、なかなかの迫力! まさに、よじ登っていくという感じです。白いペンキでルートが示されているので、それに沿って登っていきます。
足場はしっかりしていますが、岩と岩の間に落ちてしまったらただでは済まなそうなので、慎重に登っていきます。下りてくる人もいるので、道を譲りあいながら。
御室小屋の目の前に見えたピークを登りきると、たくさんの岩峰が見えてきました。新山はこのさらに奥にあるようです。
どこを登っていくのかと思ったら、この割れ目のようなところを下ってから登り返すようです。
かなり深い割れ目になっていて、下りも登りもかなり急でした。ずっとこんな岩場が続くので、なかなか気が抜けません。
先ほどの割れ目を通過したあと、岩峰の一つを登りきると、そこが「新山」の山頂でした。山頂は狭くて、ゆっくり休むという感じではないですが、景色を眺めて写真を撮ることにします。
鳥海山山頂から日本海を望む絶景!
山頂から東側には、外輪山の迫力のある断崖絶壁を間近に見ることができました。稜線に人がたくさん歩いていますが、正面に見えるのは、外輪山の一つ「七高山」のようです。鳥海山山頂(新山)から30分ほどだそうです。
日本海もバッチリ見えます。素晴らしい眺望です。
歩いてきた道のりも一望できます。扇子森や鳥海湖あたりの穏やかな丘陵地帯、その手前の外輪山や雪渓が残る千蛇谷までしっかりと見渡すことができました。
本当に素晴らしい景色です! 山頂まで登るのはかなり大変でしたが、これは登ってきて本当に良かったです。
南側には、岩の間から、月山もうっすらと見えていました。
山頂で景色を楽しみ、写真を撮ってから、登ってきた道を戻りました。
岩場はやはり下りの方がスリルがあります。慎重に足場を見つけて下ってきました。
【下山】高山植物を眺めながら千蛇谷経由で下山
御室小屋で軽くお昼を食べてから、千蛇谷経由で下山します。登ってくるときは気がつかなかった登山道脇の高山植物を眺めながら、ゆっくり下山しました。
御室小屋周辺で軽くランチ
何とか御室小屋まで岩場を下ってきましたので、ここでお昼にします。昨日、前泊した宿の近くのスーパーで購入したパンを食べます。
この日は、「SEA TO SUMMIT」というレースをやっていました。日本海でカヤック4km、日本海から鉾立までバイク21km、そして鉾立から御室小屋までのラン7kmという過酷なレースなのですが、この御室小屋がゴールになっていました。ゴールした選手たちが、たくさん休んでいました。
御室小屋の横には、「鳥海山大物忌神社」がありました。鳥海山を御神体とする神社で、ここにある本社と、麓に2か所の里宮があるそうです。鳥海山の山岳信仰の中心となってきた神社とのことです。
御室小屋は宿泊もできる山小屋ですが、2022年は8月末で営業終了のようで、すでに営業はしていませんでした。営業期間が短いので注意です。
御室小屋の様子です。小屋の周りが石垣で囲われているのは、冬場の雪対策でしょうか。山小屋としての営業は終了していましたが、トイレは利用することができました。
高山植物を眺めながら下山
12時15分頃、下山開始です。本当は、外輪山コースで下山しようと思っていたのですが、山頂から御室小屋まで下ってきたあと、足が攣ってしまい、少し痛みが残ってしまったので、大事をとって千蛇谷コースを下山することにしました。歩くのに支障がある状況ではありませんでしたが、バスの時間に遅れるとマズイですし。
外輪山コースをあきらめたので、十分に時間があります。高山植物を眺めながらゆっくりと下山しましょう。
この黄色いお花は、アキノキリンソウかな? あちこちで見かけました。
雪渓まで降りてきました。少しガスが出てきましたが、強い日差しを遮ってくれて、涼しくなりました。
外輪山コースとの合流点に到着。だいぶガスが上がってきましたね。海に近い山ですので、午後になるとどうしてもガスが上がってきてしまうようです。
七五三掛の近くには、エゾオヤマリンドウがたくさん!
七五三掛から御浜小屋に戻る途中でも、登山道脇にお花が咲いていました。これはハクサンイチゲかな?
ピンク色が鮮やかなこのお花はハクサンフウロ。
御浜小屋で小休止して鉾立へ下山
14時前に御浜小屋に到着。2リットル持っていった水が切れそうだったので、御浜小屋で500mlのミネラルウォーター(300円)を購入しました。
山小屋の北側で少し休憩。海側から湧き上がってくる雲がダイナミックでした。日差しは暑いですが、風は涼しいです。
御浜小屋から1時間くらいで、鉾立の展望台まで下ってきました。ガスが晴れてきて、再び、日本海まできれいに見渡せるようになりました。
15時10分頃、鉾立登山口に下山しました。バスの時間まで1時間ほどありますので、休憩することにします。
鉾立駐車場にある稲倉山荘へ。稲倉山荘は、食堂やお土産屋、トイレなどがある観光施設です。コーラとカレーパンを買って、しばし休憩しました。
すっかりガスも晴れて、鉾立駐車場の横にある展望台からは、鳥海山の山頂も見えました。
バスまで少し時間があったので、鉾立ビジターセンターへ。鳥海山に関する展示があり、先ほど登ってきた鳥海山の歴史を復習しました。
16時20分の「鳥海ブルーライナー」のバスで、象潟駅まで戻ってきました。朝はワゴン車でしたが、帰りは中型のバスでした。
火山らしい変化に富んだ山歩きを楽しめる鳥海山、山頂からの絶景は必見!
ということで、鉾立からのピストンで鳥海山に登ってきました。火山らしい、変化に富んだ景色を楽しむことができる山、というのが率直な感想です。
鉾立から御浜小屋までは、本当に傾斜の緩い登りが続き、鳥海山の長いすそ野の部分を登っているのだなというのが良くわかります。そして、御浜小屋から七五三掛までの穏やかな風景の中を歩く区間。高原の中を歩いているような感覚になります。外輪山を超えて千蛇谷に入ると、このルートの中では最もキツい長い登りへ。極めつけは、御室小屋から山頂までの溶岩ドームでできた岩場! とても一つの山とは思えない、いろいろな山歩きを楽しめるルートでした。
山頂からの絶景は素晴らしいの一言! 目の前に広がる日本海の絶景を眺められるのは、鳥海山ならではでしょう。独立峰ですから、360度のパノラマが広がります。
今回は、前泊日帰りでの登山でしたが、日帰りの山としてはかなりハードな印象です。距離は約15km、累積標高は1,400メートル近くになりますし、疲れたところで最後の岩場が待っています。標準的なコースタイムでは10時間近くになりますので、自信のない方は、御室小屋に泊まる1泊2日の行程にしたほうが良さそうです。
今回の主な登山装備
- ドライナミックメッシュ NSクルー(ミレー)
- 化繊の長袖Tシャツ(ワークマン)
- 着替えの半袖Tシャツ(モンベル)
- アルパインライトパンツ(ノースフェイス)
- 登山靴(モンベル アルパインクルーザー2300)
- ザック(ミレー サースフェー40+5)
- レインウェア上下 ※利用せず
- ソフトシェル(モンベル)※利用せず
- 膝サポーター(ザムスト EK-3)
- 虫よけスプレー
- 日焼け止め
- 飲み物(ナルゲンボトル1L+ペットボトル500ml×2本)
- お昼ご飯(パン2個)、行動食
- ファーストエイドキット
- ヘッドライト
行動中は、ミレーのアミアミと長袖の化繊シャツだけで十分でした。ソフトシェルも持って行ったのですが、暑くて着るチャンスがありませんでした。
9月中旬でしたが、お天気の良い日だったので、日焼け止めは必須です。樹林帯が全くなく、登山口から山頂までずっと日差しを受け続けます。顔と首には塗ったのですが、腕に塗るのを忘れ、長袖の腕をまくって歩いていたら、ものすごい日焼けをしてしまいました……。
水は2リットル持参しましたが、下山時に御浜小屋で500mlを追加購入したので、結果的に2.5リットル必要でした。
今回、失敗したなと思ったのがトレッキングポールを持って行かなかったこと。特に、千蛇谷の登りや下りは、トレッキングポールがあったほうが断然楽だったと思います。下山後、少し膝に違和感が出たのですが、石の階段や石畳のような道が続くので、膝への負担も大きいのだと思います。トレッキングポールがあれば、膝への負担も多少は和らげることができたかもしれません。
以上、「【東北】前泊日帰りで鳥海山に挑戦! 変化に富んだ登山道と日本海の絶景を楽しむ山旅!」でした。火山らしい変化に富んだ景色を眺めながら山歩きができる山です。日帰りではなかなかハードですが、その分、山頂からの絶景は素晴らしいです。
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3年ほど前に登山を始めた体力に自信のない私が、どのようにステップアップしてきたかをまとめた記事です。これから登山を始めようという方、始めたばかりの方は、ぜひご覧ください。
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