丹沢の主要な山には山小屋が多くあります。そのうち、尊仏山荘(塔ノ岳)、みやま山荘(丹沢山)、蛭ヶ岳山荘(蛭ヶ岳)の3つに宿泊してみましたので、それぞれの山小屋のレビューと、魅力的なポイントをまとめてみます。どの山小屋も特徴があって、一度は宿泊されることをおすすめします。
丹沢の山小屋について
神奈川県にある丹沢山塊には、多くの山小屋があります。中でも、主稜線に位置する尊仏山荘(塔ノ岳)、みやま山荘(丹沢山)、蛭ヶ岳山荘(蛭ヶ岳)は宿泊もできる山小屋です。まさにそれぞれの山の「山頂」にあるため、眺望はもちろんのこと、夕陽やご来光を楽しむことができます。
そして、山小屋の楽しみの一つがお食事。それぞれの山小屋の特徴がもっとも出るところですね。
さらに、寝室での寝心地や共用スペースの居心地なんかも重要ですね。くつろいで過ごすことができるか、しっかりと睡眠をとることができるかは、翌日の登山のパフォーマンスにも影響します。混雑具合に大きく影響されますが、それほど混雑していないという前提でレビューしています。
ということで、尊仏山荘(塔ノ岳)、みやま山荘(丹沢山)、蛭ヶ岳山荘(蛭ヶ岳)の3つの山小屋に着いて、眺望、食事、居心地の3つについて簡単にレビューしてみます。
なお、私が宿泊したのは、11月下旬~12月中旬頃、いずれも平日または日曜日の宿泊です。
【尊仏山荘】塔ノ岳山頂からの夜景とご来光が素晴らしい山小屋、手作りカレーの夕食も!
尊仏山荘は、塔ノ岳の山頂にある山小屋です。相模湾や関東平野の夜景、富士山の眺めが素晴らしく、夕食の手作りカレーもボリュームがあって満足できます。
塔ノ岳は日帰りで十分に登れる山ですので、登山者の数に比べて、山小屋に泊まる人は多くありません。それでも、眺望の良い山頂から眺める夜景やご来光は、山頂に泊るからこそ見ることができる景色ですね。
眺望: 塔ノ岳山頂からの夜景とご来光が素晴らしい!
塔ノ岳の山頂からは、相模湾や神奈川~東京方面の街並みを一望できます。夜になると見事な夜景を見ることができるのです。
宿泊した日はあまりお天気が良くなく、夕陽や夕焼けを見ることはできませんでしたが、夜になるとガスがとれてきて、夜景を楽しむことができました。
塔ノ岳山頂で迎える朝も最高です。お天気が良ければご来光を見ることもできますし、朝の清々しい富士山の景色も素晴らしいです。
食事: 具だくさんの手作りカレーの夕食とおでんの朝食
尊仏山荘の夕食は手作りのカレーに、野菜やフルーツがたっぷりのサラダです。カレーは、ごはんもカレーもおかわり自由です。
カレーは山小屋ごはんの定番ですが、この尊仏山荘の手作りカレーはとてもおいしいです。ついおかわりしたくなる味です。付け合わせのサラダもボリュームがあっていいですね。
朝食はごはんとおでん、お漬物というシンプルなものです。おでんはできあいのレトルトのものだと思いますが、熱々に温められていますし、塩気もあってごはんが進みます。
尊仏山荘の夕食は、豪華さはなく、山小屋ごはんの定番という感じではありますが、手作りカレーがおいしいのがいいですね。
居心地: 個室+2段ベット、空いていれば一人で個室占有も!
尊仏山荘の寝室は2階にあります。2~3名程度の個室がいくつかと、大部屋の2段ベットという構成です。
私が泊った時は宿泊客が6名だけでしたので、一人で3名用の個室を占有できました。おかげでゆっくりと休むことができました。
夕食と朝食は1階の休憩スペースでとりました。というよりも、尊仏山荘に到着してから、翌朝、出発するまで、寝ているとき以外はだいたいこの休憩スペースで過ごしました。
それほど広くはありませんので、混雑していると居場所に困るかもしれません。空いていればとても快適です。
眺望と手軽さで初めての山小屋泊におすすめ!
尊仏山荘の個人的な評価をまとめると以下のようになります。
- 眺望: ★★★★☆
- 食事: ★★★☆☆
- 居心地: ★★★☆☆
塔ノ岳の山頂にあるということで、眺望は間違いありません。日帰り登山では見ることができない夕陽や夜景、ご来光を見るだけでも尊仏山荘に泊る価値があります。食事は定番といった感じですが、手作りカレーがとても良いです。
日帰りで昇れる塔ノ岳ですが、尊仏山荘は初めての山小屋泊におすすめの山小屋です。私も初めての山小屋泊はこの尊仏山荘でした。
- 尊仏山荘
- 料金: 8,000円(1泊2食付)
- 水場: あり(不動の清水、山頂から往復30分)
- URL: https://sonbutsusanso.amebaownd.com/
おすすめコース
尊仏山荘が建つ塔ノ岳へは、渋沢駅からバスで15分の大倉から大倉尾根を登るのが定番です。
- 登山コース: 大倉バス停~塔ノ岳~大倉バス停
- コースタイム: 約6時間
- 距離: 約14km
- 累積標高: 1,320メートル
大倉尾根はひたすら階段が続きます。大倉バス停と塔ノ岳山頂の標高差は1,200メートルにもなるため、それなりに体力が必要ですが、尊仏山荘に宿泊するのであれば、ゆっくりと登れば大丈夫でしょう。
一方、眺望が良いコースとしては、ヤビツ峠から丹沢表尾根を歩くコースがおすすめです。
- 登山コース: ヤビツ峠~塔ノ岳~大倉バス停
- コースタイム: 約8時間
- 距離: 約15km
- 累積標高: 1,200メートル
三ノ塔から先は眺望の良い尾根を歩きます。大倉尾根に比べるとアップダウンが多く、途中、鎖場もあるため、少し山歩きに慣れてから挑戦するのがおすすめです。
ヤビツ峠はバスの本数が少ないので、ヤビツ峠から登り、大倉へ下山するコースがよいと思います。
尊仏山荘に宿泊したときの登山日記です。大倉尾根から塔ノ岳に登り、尊仏山荘に宿泊。翌朝は表尾根をヤビツ峠方面へ下山しました。
【みやま山荘】眺望はやや劣るものの食事がとてもおいしい山小屋!
「みやま山荘」は、日本百名山の丹沢山の山頂に建つ山小屋です。塔ノ岳や蛭ヶ岳に比べると、眺望はやや劣りますが、西側が開けているため、富士山に沈む夕陽を眺めることができます。
みやま山荘の特徴は何と言ってもおいしいごはん! 特に夕食の陶板焼きは絶品で、これを山頂にある山小屋で食べることができるなんて信じられないくらいです。
眺望: 西側が開けていて富士山に沈む夕陽を眺められる
丹沢山の山頂からの眺望は主に西側です。南側も見えないこともないですが、樹木越しになるので、すっきり見ることはできません。
西側が開けているので、お天気が良ければ富士山を眺めることができます。そして、富士山の近くに沈む夕陽が素晴らしいです。
ご来光は、みやま山荘の裏側から樹木越しに見ることができました。ただ、みやま山荘の裏側から見えるのは主に南側なので、日の長い時期(太陽が北寄りから昇ってくる時期)では見えないかもしれません。
夜景は、南側の樹木越しに少し見ることができます。
塔ノ岳、蛭ヶ岳と比べると、眺望はやや劣る印象です。
食事: 陶板焼きの夕食と炊き込みご飯の朝食は絶品!
みやま山荘の夕食は陶板焼き! 自分で焼いていただく形式ですが、これがとてもおいしい! ごはんがどんどん進みますが、ごはんとお味噌汁はおかわり自由なので心配はありません。
まるで旅館のようは夕食。この夕食を食べるためにみやま山荘に宿泊するのもありです。
朝食はシンプルですが、炊き込みご飯がとてもおいしいです。朝からごはんも進みます。
みやま山荘は食事がおいしいことで知られていますが、その噂に偽りなしです。
居心地: 大部屋の2段ベット+2人用簡易個室
みやま山荘の寝室は2階にあります。基本的に2段になった大部屋ですが、2人用の簡易個室が2つあります。横は壁で仕切られていますが、廊下側はカーテンしかありません。
私が宿泊した日は宿泊客が10名に満たなかったので、大部屋でもゆったりと過ごすことができました。
そして、みやま山荘は、他の山小屋に比べると、寝室を含めて全体的に暖かいです。12月中旬、早朝には氷点下になる季節に泊りましたが、山小屋の中にいるときはまったく寒い思いをすることなく過ごすことができました。
食事目当てでの宿泊がおすすめ! 丹沢主稜・主脈縦走の宿泊地としても
みやま山荘の個人的な評価をまとめると以下のようになります。
- 眺望: ★★☆☆☆
- 食事: ★★★★★
- 居心地: ★★★★☆
やはり、ごはんがおいしい山小屋ですので、それを目当てに宿泊してもよいでしょう。丹沢山塊ではもちろんのこと、これまで宿泊した山小屋の中でも1,2を争うほどのレベルの高いお食事です。
丹沢山に初めて登るのであれば、大倉尾根から塔ノ岳経由でののピストンで、みやま山荘に宿泊するのが良いと思います。丹沢主稜・主脈縦走の宿泊地としても利用できます。
- みやま山荘
- 料金: 9,000円(1泊2食付)
- 水場: なし(500mlペットボトル400円)
- URL: http://miyamasansou.com/
おすすめコース
大倉バス停から大倉尾根を登り、塔ノ岳を経由して丹沢山へ向かうのが定番コースでしょう。
- 登山コース: 大倉バス停~塔ノ岳~丹沢山~大倉バス停
- コースタイム: 約8時間30分
- 距離: 約18.5km
- 累積標高: 1,700メートル
日の短い時期は日帰りには厳しいコースタイムですが、みやま山荘に宿泊する1泊の行程であれば、ゆったりと登ることができます。塔ノ岳の山頂でのんびりすることもできます。
同じルートを戻るのはつまらないという方は、丹沢山から丹沢三峰を経由して宮ヶ瀬に下るコースもあります。
- 登山コース: 大倉バス停~丹沢山~丹沢三峰~宮ヶ瀬
- コースタイム: 約9時間30分
- 距離: 約20km
- 累積標高: 1,950メートル
丹沢山から標高1,350メートル前後の小ピークをいくつか超えたあと、一気に標高を下げていくコースです。眺望はあまりありませんが、歩く人が少ないため、静かな山歩きを楽しめます。
こちらも日帰りには厳しいコースタイムですが、みやま山荘に宿泊すれば、翌日お昼には下山できます。
大倉尾根から登り、塔ノ岳を経由して丹沢山へ。みやま山荘で1泊して、翌日は丹沢三峰を経由して宮ヶ瀬へ下山した時の登山日記です。
【蛭ヶ岳山荘】都心方面の夜景と夕陽・ご来光が素晴らしい眺望の山!
「蛭ヶ岳山荘」は蛭ヶ岳の山頂にある山小屋です。丹沢山塊の最高峰であるだけでなく、神奈川県の最高峰でもあります。
蛭ヶ岳山頂からの眺望は素晴らしく、ほぼ360度の展望があります。東側は関東平野、南側は丹沢の山々、西側は西丹沢の山々に富士山と、どちらを見ても絶景です。そんな「眺望の山」ですから、夜景や夕陽、ご来光も素晴らしいです。
眺望: 富士山に沈む夕陽、都心方面の夜景、東京湾から昇る朝日!
蛭ヶ岳山荘に泊まる一番のメリットは、何と言っても夕陽や夜景、ご来光です。山頂からはどの方向にも眺望があるので、全て見ることができるのです。
蛭ヶ岳山頂から西側には富士山がきれいに見えますが、夕陽はその富士山の方向に沈んでいきます。11月下旬に宿泊した時には、富士山の南側のすそ野に沈んでいきました。
蛭ヶ岳山荘の裏側からは東側の眺望があり、関東平野を一望できます。夜になるとこのとおり! 関東平野の夜景が目の前いっぱいに広がります。
塔ノ岳山頂からの夜景もきれいでしたが、より視界が開けている蛭ヶ岳山頂からのほうが見ごたえがあります。
山頂からはご来光を望むこともできます。東京湾のさらに向こう側、房総半島のほうから昇ってくる太陽を見ることができました。右手前に見える海は相模湾で、江の島が見えています。
眺望に関しては、さすがに丹沢最高峰だけあって、非常に優れています。
食事: 名物「ひるカレー」はコクがあっておいしい!
蛭ヶ岳山荘の夕食はカレーでした。(カレー以外の場合もあるようです)
山小屋では一般的な夕食ではありますが、蛭ヶ岳山荘のカレーは「ひるカレー」と言われていて、名物になっています。ランチタイムに軽食として出ているのですが、夕飯に出ることもあります。
「ひるカレー」は、ほのかに辛くてコクがあり、ごはんとの相性がぴったりです。ごはんはおかわり自由なので、カレーを少し残して、ごはんをおかわりしましょう。
朝食はごはん、みそ汁、漬物などちょっとしたおかずというシンプルなものです。特別に豪華というわけではありませんが、山小屋の朝食としては十分でしょう。
居心地: 共用スペースは広め、寝室はやや冷える
共用スペースはかなり広く、ゆったりと過ごすことができました。食事もこのスペースでとることになりますが、宿泊した日は15~16人ほどでしたので、それほど混雑することはありませんでした。
寝室も同じフロアにあるのですが、基本的に大部屋のみです。まあ、ふつうの山小屋といった感じです。ストーブがある共用スペースと同じフロアで、暖気があまり入ってこないため、寝室はやや冷えます。寒い時期は、就寝用の防寒着も持って行った方がよいと思います。
眺望No.1! 丹沢主稜・主脈縦走の宿泊地としても最適!
蛭ヶ岳山荘の個人的な評価をまとめると以下のようになります。
- 眺望: ★★★★★
- 食事: ★★★☆☆
- 居心地: ★★★☆☆
蛭ヶ岳山荘の特徴は、やはり眺望が素晴らしいこと。都心方面の煌びやかな夜景は素晴らしいですし、山小屋からちょっと外に出れば、夕陽やご来光を眺めることができます。
食事や設備はこれといって特筆すべきことはありませんが、眺望目当てで宿泊する価値は十分にあります。
また、丹沢主稜・主脈のほぼ中間地点に位置するため、縦走する際の宿泊地としておすすめです。とはいえ、大倉、焼山、西丹沢ビジターセンターのいずれの登山口からもコースタイムで6~8時間と遠いです。稜線に出てもアップダウンが多めなので、体力も必要となります。
蛭ヶ岳山荘に宿泊した時、どの登山口から登ってきた方も、一様に「キツかった」と言っていたのが印象的でした。
- 蛭ヶ岳山荘
- 料金: 8,000円(1泊2食付)
- 水場: なし(ペットボトル販売あり)
- URL: http://kitatan.com/hirutop.html
おすすめコース
蛭ヶ岳は丹沢主脈・主稜縦走の宿泊地として最適な場所にありますので、丹沢縦走がおすすめです。登山口から稜線までの上りに加えて、稜線上もアップダウンが多いため、1泊2日の行程だとしても、それなりにハードです。
- 登山コース: 丹沢主稜縦走(大倉~塔ノ岳~丹沢山~蛭ヶ岳~檜洞丸~西丹沢VC)
- コースタイム: 約13時間
- 距離: 約24km
- 累積標高: 2,600メートル
以下の記事は、上記のコースで蛭ヶ岳山荘に宿泊して、丹沢主稜を縦走した時のものです。
丹沢の山小屋宿泊の注意点
丹沢の山小屋を個人的な主観でレビューしてきましたが、最後に一点だけ注意事項を。
この記事で紹介した山小屋は全て山頂にあることもあり、水場があまりありません。唯一、尊仏山荘だけは、少し(といっても往復30分はかかりますが……)下ったところに「不動の清水」という水場がありますが、私が宿泊したときには、本当にちょろちょろとしか出ていませんでした。
他の山小屋の近くには水場はありませんし、丹沢主脈・主稜線上にもありません。
山小屋で水のペットボトルを購入することはできますが、500mlのペットボトルが400~500円ほどします。自炊で水をたくさん使う場合など、多めに水を持参しましょう。
【まとめ】丹沢の山小屋
以上、極めて個人的なレビューでしたが、一応まとめると以下のようになります。
- 尊仏山荘
- 登山口から比較的近く、初めての山小屋泊におすすめ!
- 眺望もかなり良い
- みやま山荘
- 食事が絶品! 食事目当ての宿泊ならここ! 居心地も抜群!
- 丹沢山への登山が目的なら文句なしにみやま山荘!
- 蛭ヶ岳山荘
- 眺望抜群! 山小屋としては可もなく不可もなく
- 丹沢縦走の宿泊地におすすめ!
こんな感じでしょうか。
山小屋だけでなく、山頂からの眺望なども含めると、いずれも特徴があるので、全て泊まってみると良いと思います。
以上、「【丹沢の山小屋】尊仏山荘、みやま山荘、蛭ヶ岳山荘に泊まってみた! 眺望、食事、居心地を比較!」でした。それぞれ特徴があって良い山小屋ですし、山頂で迎える朝は格別です。ぜひ宿泊して、丹沢の山歩きを楽しんでみてください。
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