北岳・間ノ岳登山。初日に白根御池小屋に宿泊したあと、2日目は朝から北岳へ。雲が湧く前に登頂できて、山頂からの大展望を楽しめました。今回の記事では、北岳に登頂したあと、間ノ岳までの3000メートル越えの縦走路を歩いてきたところからお届けします。
【北岳~間ノ岳】3000メートル超えの縦走路を歩いて間ノ岳に登頂
北岳から北岳山荘が建つ鞍部まで一気に下り、そこから登り返して間ノ岳まで縦走します。途中の中白根山付近から間ノ岳までは、日本でもここにだけしかないという標高3,000メートル超えの縦走路です。
北岳山頂から一気に300メートル下って北岳山荘へ
広河原から入って、初日は白根御池小屋に宿泊。翌日早朝から草すべりを経由して北岳に登頂しました。その様子は前回の記事をご覧ください。
2日目は北岳山荘に宿泊するのですが、予定していたよりもだいぶ早い時間に北岳に登頂できたので、このあと、間ノ岳まで往復できそうです。
そう思って間ノ岳のほうを眺めてみると、幸い、まだ稜線には雲がかかっていません。歩いているうちに雲に巻かれるかもしれませんが、雨が降る前に北岳山荘まで戻れればいいやと思い、間ノ岳へ往復することにします。
まずは、北岳の山頂から北岳山荘まで一気に下ります。北岳山頂直下は、やや岩が多く、急なところもあるので、慎重に下っていきます。
山頂のすぐ下に咲く赤い花。イワベンケイというお花のようです。赤色がとても鮮やか。
山頂直下の急坂を下り切ると、山腹にジグザグに付けられた登山道になります。歩きやすそうに見えますが、ここも傾斜が急で、しかもザレているので、滑らないように気をつけて下っていきます。
登山道脇にはヨツバシオガマが咲いていました。高山ではよく見かけるお花ですね。
標高差で100メートルほど下ってくると、八本歯のコルへの分岐があります。北岳山荘のほうへ下っていきます。
だいぶ下ってきて、北岳山荘の赤い屋根が近くに見えるようになってきました。
北岳山荘の標高は2900メートル弱。北岳山頂から300メートルも下ってきたことになります。下りなので体力的には楽ですが、かなり急でザレているところもあるので気を使います。北岳山荘で少し休憩していきましょう。
午前9時半過ぎ、北岳山荘に到着しました。トイレを済ませ、水を補給します。水は、山荘入口横にある蛇口から給水できます。少し休憩したので、間ノ岳に向けて出発しましょう!
200メートルの登り返しで中白根山へ
前述のとおり、北岳山荘の標高は2900メートルを少し切るくらい。間ノ岳の標高は北岳より3メートル低いだけですので、ここから300メートルの登り返しです……。「縦走路」といっても、小さな山を一つ登るくらいの感じです。
北岳と北岳山荘です。こちらから眺める北岳は、均整の取れた三角形をしていて、カッコいいですね。北岳の肩のほうから眺める北岳とは、だいぶ印象が違います。
これから歩く縦走路と中白根山です。北岳の山頂付近ほど急ではありませんが、しっかりと上りですね……。頭上は高曇りになってきましたが、稜線にはまだ雲はかかっていません。
中白根山への登りにかかりました。岩が多い斜面に、ジグザグに付けられた道を登っていきます。それほど急ではありませんが、今日は白根御池小屋からかなり歩いてきたこともあり、それなりにしんどいです。
登山道の脇には白いかわいらしいお花。イワツメクサのようです。
先ほどの小ピークを越えると、中白根山の山頂が見えてきました。山頂までは比較的緩やかな登りのようで、助かります。
10時15分、中白根山に到着しました! 文字が消えかかった山頂標柱が立つだけの地味な山頂ですが、標高は3,055メートル。堂々の3000メートル峰です。
「中白根山」という山名は、白根三山の真ん中にある山ということから付けられたのだそうです。
3000メートル越えの縦走路へ
中白根山を超えると、間ノ岳へと続く山並みが見えてきます。中白根山の山頂からは緩い道を下りますが、すぐにあの険しい稜線に取り付くようです。
3000メートル超えの稜線に咲くシコタンハコベ。
中白根山~間ノ岳の稜線下の斜面には、トウヤクリンドウのつぼみがたくさんありました。9月上旬頃に咲くのだそうですが、このときはつぼみばかりで、咲いている花は見かけませんでした。
中白根山近くの斜面には、よく見ると、やや黄色味がかったトウヤクリンドウのつぼみがあちこちにあります。これが全部咲いたら、なかなか壮観でしょうね。
そうこうしているうちに、緩やかなボーナスロードは終わり、また登りになります。
最初の急なところを登りきると、稜線の西側に付けられた道が続きます。前方に小ピークらしきものが見えてきましたね。
小ピークっぽいところに到着しました。ケルンのようなものに棒が刺さっていますが、とくに山名や地名などを示すものはないようです。
休憩している登山者がたくさんいました。大学の登山部と思われる学生さんも、大勢休憩していました。中にはかなりツラそうな人も……。今日の目的地がどこかわかりませんが、大丈夫かな?
間ノ岳まではもう少しですが、ここで水分補給の休憩を軽く取りました。休憩の間、歩いてきた方向を振り返ってみると、中白根山(左側の山)と北岳(右奥の山)が見えました。
中白根山から続いている道が見えるでしょうか? これが3000メートル超えの縦走路です。
前方を見ると、間ノ岳がだいぶ近くなってきました。少しガスが上がってきましたが、真っ白になる前に到着できるでしょうか……。
ニセピークを超えて日本の標高第3位の間ノ岳へ
小ピークから間ノ岳へは、大きな岩が多い道が続きます。ところどころ、登山道に大きく張り出している岩を乗り越えていくところもあるので、注意して進みます。
しばらく歩くと、ピークっぽいものが見えてきましたが、あれはニセピーク。あのニセピークを越えると……
次こそ、本物の間ノ岳の山頂が見えてきました! ほぼ同じ標高の北岳と違って、間ノ岳の山頂付近はなだらかな斜面が続いています。
広々とした山頂の間ノ岳に登頂!
11時15分、北岳山荘から1時間半ほどで、間ノ岳に到着しました!
標高は3,190メートルで、日本では、富士山、北岳に続く第3位の標高を誇る山です。現在は、北アルプスの最高峰、奥穂高岳と同じ標高になっています。少し前までは、間ノ岳の標高は3,189メートルとされていましたが、測定方法が見直されたことと、南アルプスが年々隆起していることなどから、少し前に3,190メートルになったのだそうです。
周囲はだいぶ雲が湧いてきてしまいましたが、山頂がガスに覆われることはなく、眺望はありました。富士山もかろうじて見えました。
南側には、先ほどまで歩いてきた稜線がさらに続いています。左側に見えるのは、北岳、間ノ岳と並ぶ白根三山の一つの農鳥岳です。ちなみに、「間ノ岳」(あいのだけ)という山名も、白根三山の真ん中にあるから、という由来なのだそうです。
北岳から農鳥岳まで縦走する「白根三山縦走」も人気のコース。次回は挑戦してみたいですね。
間ノ岳の山頂は、とても穏やかな傾斜で広々としています。北岳の山頂とは対照的ですね。
かつてはもう少し尖った山だったものが、山頂部分が風化や崩落によって削られ、今のような広く平らな山頂になったのではないかという説もあるそうです。そうだとしたら、現在でも標高差がわずか3メートルしかない北岳よりも高かったことになりますね。
ザックを下ろして軽く休憩することにします。景色を眺めながら、行動食を食べ、水分補給。もう少しゆっくりしていたいところですが、天候が悪化する前に北岳山荘に戻ることにしましょう。
【北岳山荘】山小屋でゆっくり過ごし御来光を眺める
間ノ岳から北岳山荘まで戻って、午後は山小屋でゆっくり過ごしました。翌朝、北岳山荘前から素晴らしい御来光を眺めることができました。
間ノ岳から北岳山荘へ
間ノ岳山頂から北岳山荘へ戻ります。稜線の東側から雲が湧いてきて、間ノ岳~中白根山の間はこんな景色に。稜線で雲が遮られていて、西側に付けられた登山道はガスに覆われることはありませんでした。
北岳山荘の近くまで戻ってくると、北岳はすっかり雲の中。北岳山荘の周りも霧が立ち込めています。何はともあれ、雨が降る前に北岳山荘に戻ってくることができました。
13時少し前、北岳山荘に到着です。ゆっくりめに歩いて、間ノ岳の山頂から1時間15分くらいでした。
北岳山荘でまったり過ごす
宿泊の手続きをして2階の大部屋へ。着替えてザックの中を整理してから食堂へ。
まだランチ営業をしていたので、カレーと缶ビールで乾杯! シンプルなビーフカレーですが、コクがあっておいしいカレーでした。
そのあとは、急に疲れが出て、布団でしばらくお昼寝。夕食の時間までのんびりしました。
夕方になると、ガスが少し晴れてきて、大部屋の窓から富士山を見ることができました。みなさん、スマホやカメラをもって、窓際にやってきては、写真を撮っていました。
17時50分から夕食。夕食は鱈のホイル焼きでした。標高3000メートル近くで、海のお魚を食べられるのも、不思議な感覚です。おいしくいただきました。
夕食後に外へ出てみると、ガスはすっかり晴れて、北岳がきれいに見えました。午後からにわか雨の予報でしたが、結局、雨は降らなかったようです。
20時前に就寝。おやすみなさい。
北岳山荘前で素晴らしい御来光を眺める
翌日は午前4時頃に起床。山小屋の朝は早く、午前3時を過ぎると、起きだしてくる人が増えますね。山頂で御来光を見ようという人たちは、それくらいの時間に起きて出発しないと間にあわないですし。
朝が弱い私は、山頂で御来光を見るという選択肢はなく、山小屋の前から眺めることにします。
日の出は午前5時過ぎなので、5時前にカメラを持って山小屋の外へ。ソフトシェルを羽織って出てきましたが、風が吹くと寒いですね。
雲海と朝焼けに浮かぶ富士山が素晴らしいです。
5時10分過ぎ、雲の間から太陽が出てきました。
太陽が出てきて、北岳にも陽が当たり始めました。
富士山と御来光。素晴らしい時間でした。
いったん寝床に戻って、出発の準備をします。
【北岳~広河原】北岳山頂で再び絶景を満喫して下山
3日目は、再び北岳山頂に登り、山頂からの絶景を満喫! その後、草すべりを経由して広河原まで下山しました。朝の澄んだ空気のせいか、北岳山頂からの景色は前日よりくっきり! 1時間も山頂で景色を楽しんでしまいました。
朝イチで北岳山頂へ300メートルの登り!
支度を済ませ、北岳山荘を午前6時前に出発します。
下山は、登りとは別のルート、具体的には八本歯のコルを経由するルートにしてもいいかなと思っていたのですが、そうすると北岳山頂を経由しないのですよね。朝のお天気を見て、もう一度北岳山頂からの景色を眺めてみたい! と思って、北岳山頂~草すべりのルートにしました。
昨日歩いてきた間ノ岳への稜線もくっきり!
北岳も見事です。朝イチで、山頂まで標高差300メートルの登り返しはかなりキツいですが、山頂からの絶景を楽しみに頑張りましょう。
北岳山荘の近くから眺める富士山も素晴らしいです。山梨県側から眺める富士山は、本当に美しい!
八本歯のコルへの分岐を過ぎると、急登になります。急な岩場に急な階段が続くこのあたりが一番キツイ!
上のほうにある分岐です。ここまでくればあと一息! 朝イチということもありますが、標高が高いので、すぐに息が切れます。時間はたっぷりあるので、できるだけゆっくりと登るようにします。
午前7時前、北岳山荘からちょうど1時間で北岳山頂に到着! 昨日は午前8時半頃でしたので、1時間半ほど早い時間に登頂しました。夏山は、朝早いほど雲が少ないので、昨日よりも素晴らしい景色を楽しめるはず!
北岳山頂からの絶景を1時間も眺める!
北岳のすぐ近くにある仙丈ヶ岳です。昨日、草すべりを登って稜線に出たあたりからずっと見えていましたが、今日もきれいに見えていますね。
仙丈ヶ岳の後ろには、北アルプスの山並みが見えています。写真中央に穂高連峰~槍ヶ岳がくっきりと見えていますね。
北アルプスの西側に続くように、中央アルプスの山並みも一望です。写真右側には木曽駒ヶ岳、その後ろには御嶽山まで見えています。
中央アルプスの山並みから少し離れたところに、台形の形をした恵那山も!
雲海に浮かぶ富士山も美しい!
甲斐駒ヶ岳と、その奥に八ヶ岳。さらに奥には浅間山まで!
昨日歩いてきた間ノ岳への稜線。昨日は雲がかかってしまって、南アルプス南部の山々は見えなかったのですが、今日はバッチリです。
北岳山頂から、ぐるっと一周、周囲の景色を動画で撮影してみました。(風切り音がうるさくてすいません。)
昨日も十分にこの絶景を見たはずなので、スルーしてもよかったのですが、再びこの景色を眺めてみると、やっぱりもう一回見られてよかった、と思いますね。
山頂にいらっしゃった方々とお話をしたり、写真を撮りあったりして、1時間も山頂で過ごしてしまいました。昨日より少し風がありましたが、寒いほどではありませんでした。
草すべりを経由して広河原へ下山
北岳山頂からの絶景を十分に満喫したので、午前8時過ぎ、下山を開始します。まずは眼下に見える北岳肩の小屋まで下りましょう。
30分弱で北岳肩の小屋まで下りてきました。ここでトイレをお借りして、小休止。
北岳山頂から広河原の登山口までは、標高差で1,700メートル近くを一気に下ることになります。膝の負担を少しでも和らげるべく、トレッキングポールを使って下りましょう。
北岳ともお別れです。登りはかなりキツかったですが、とても良い山でした。何と言っても、山頂からの眺望が素晴らしい! 初めての南アルプス登山に北岳を選んでよかったです。
小太郎山分岐です。仙丈ヶ岳と甲斐駒ヶ岳が見える絶景ポイントです。この分岐で、稜線から降りていくことになります。
草すべりの樹林帯に入ると、眺望もなくなるので、あとは無心に下るだけです。
午前10時頃、白根御池小屋まで下ってきました。北岳山頂から2時間ほどです。北岳山頂がまだきれいに見えています。
広河原から甲府駅へのバスの時刻を調べてみると、12時の次は14時。頑張れば12時のバスにも間に合いそうですが、今日は帰るだけですので、14時のバスに乗ることにして、白根御池小屋の前でゆっくり休憩しました。
白根御池小屋からゆっくりと下り、12時半頃に広河原に下山しました。靴を洗ったり、着替えたりしたあと、広河原山荘で軽く生ビールを1杯飲んで、14時のバスで帰宅しました。
山頂からの絶景と稜線歩きを楽しめた北岳登山
初めての南アルプス登山で、北岳・間ノ岳に登ってきました。
コースはオーソドックスな草すべりからのピストン。途中、危険箇所はそれほどありませんでしたが、草すべりから上は傾斜が急なところが多く、標高差も大きいため、楽な山ではありませんでした。
今回は、中腹にある白根御池小屋で1泊しましたが、結果的に良かったと思います。一気に標高差1,700メートルを登るのはかなりキツいですし、高山病になる確率も下げられたのではないかと思います。
北岳山頂からの眺望は、まさに「大展望」と呼ぶのにふさわしいものでした。360度どこを見ても絶景ですし、近隣の甲斐駒ヶ岳、仙丈ケ岳、鳳凰三山、八ヶ岳はもちろんのこと、北アルプスや中央アルプスまで一望です。そして、なんといっても、とても均整の取れた姿の富士山を眺められるのは、南アルプスならではですね。
間ノ岳への3000メートル級の縦走路も楽しめました。体感的には、北岳山荘から登り一辺倒という感じで、稜線を縦走しているという感覚はあまりありませんでしたが、中白根山~間ノ岳の稜線はそれっぽかったですね。
今回の主な登山装備
- ドライナミックメッシュ(ミレー)
- 半袖のメリノウールシャツ(モンベル)
- 長袖の化繊シャツ(モンベル)
- 薄手のシェル(ワークマン)
- アルパインライトパンツ(ノースフェイス)
- 登山靴(モンベル アルパインクルーザー2300)
- ザック(ミレー サースフェー40+5)
- レインウェア上下 ※利用せず
- 膝サポーター(ザムスト EK-3)
- トレッキングポール(シナノ)
- 飲み物 合計1.5リットル(ナルゲンボトル1000ml+ペットボトルの水500ml)
- お昼ご飯、行動食等
- ファーストエイドキット
- ヘッドライト
- 着替え(半袖Tシャツ, 長袖Tシャツ, 短パン, 下着等)
行動中は、ミレーのあみあみ、半袖のメリノウールシャツ、長袖の化繊シャツの3枚でした。広河原から白根御池小屋への登りは、時間帯がお昼前後だったこともあってかなり暑かったですが、それ以外はこの3枚でちょうどよかったです。
草すべりから上は急登が続くのと、標高差がかなり大きいコースでしたので、トレッキングポールも使用しました。広河原~草すべり~北岳~間ノ岳のコースでは、特にトレッキングポールをしまわないと進めないようなところはありませんでした。
水分を1.5リットル持っていきましたが、途中で水を補給できる山小屋が多いので、十分に足りました。
北岳山頂では、真夏でも早朝は気温が一桁まで下がることがあるそうですので、防寒対策はしっかりとしておいたほうが良いと思います。北岳山荘前で御来光を待っているときは、結構寒かったです。
以上、「【北岳】北岳山頂からの絶景と間ノ岳への3000メートル級縦走路を歩く山旅! ~北岳・間ノ岳縦走編~」でした。キツイ登りのご褒美は、山頂からの絶景! ぜひ晴れている時に登りたい山です。北岳肩の小屋か北岳山荘で1泊すれば、絶景を見られるチャンスも増えますね。
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