初めての南アルプス登山は、北岳と間ノ岳に登ってきました。白根御池小屋と北岳山荘に宿泊する2泊のゆったり行程です。北岳への登りはキツかったですが、山頂からの眺めはまさに360度の大展望! その後、日本で唯一という3000メートル越えの縦走路を歩き、間ノ岳まで往復。少し雲が多めでしたが、天空の縦走路を楽しめました。
この記事では、広河原を出発して、白根御池小屋で1泊。翌日、北岳に登頂するまでの様子をお届けします。
初の南アルプス登山は北岳・間ノ岳に挑戦!
登山を初めて4年弱。今年の夏山は、これまで行ったことのない南アルプスの山に登ろうと計画しました。最初に登る南アルプスの山はどこがよいか? と、これまで泊った山小屋でご一緒した方に聞くと、「まずは北岳でしょう」とのことでしたので、北岳に登ることにしたのでした。
本当は8月上旬に登る予定だったのですが、天候が悪く延期。8月下旬に登ることにしました。
8月上旬の時点では、甲府駅近くに前泊して、北岳肩ノ小屋に泊る1泊の行程を予定していました。ところが、お盆休み以降の平日は、甲府駅から登山口となる広河原へのバスの初便が午前9時過ぎ。新宿駅を午前7時に出る「あずさ1号」で十分に間にあうので、前泊ではなく、登山口から3時間程度の中腹にある「白根御池小屋」に泊まることにしました。そして、2日目に北岳に登って「北岳山荘」に宿泊。2日目か3日目のお天気の良い日に間ノ岳まで往復する計画にしたのでした。
今回のルートは以下のとおりです。
登山口の広河原から、北岳・間ノ岳へのピストンです。白根御池小屋から北岳へは、草すべりを通るルートと、八本歯のコルを通るルートがありますが、今回は往復とも草すべりを通るルートにしました。
結果的には、2日目に間ノ岳まで往復する以下のような行程となりました。
- 1日目
- 11:20 広河原登山口 出発
- 13:20 白根御池小屋 到着(泊)
- 2日目
- 05:45 白根御池小屋 出発
- 07:40 肩ノ小屋 到着(小休止)
- 07:50 肩ノ小屋 出発
- 08:15 北岳 到着
- 08:50 北岳 出発
- 09:30 北岳山荘
- 10:10 中白根山
- 11:10 間ノ岳 到着
- 11:40 間ノ岳 出発
- 12:55 北岳山荘 到着(泊)
- 3日目
- 05:50 北岳山荘 出発
- 06:50 北岳 到着
- 08:00 北岳 出発
- 08:30 肩ノ小屋
- 10:00 白根御池小屋 到着
- 10:45 白根御池小屋 出発
- 12:40 広河原登山口 下山
2泊3日で距離は約20km、累積標高は2,630メートルでした。山小屋で2泊したので、かなりゆったりとした行程となりました。ただ、草すべりをはじめ、広河原から北岳への登山道は、かなり急登が多く、標高差も1,700メートルと大きくなっていますので、それなりに疲れました。
北岳登山口(広河原)への公共交通機関でのアクセス
北岳の登山口となる広河原への、公共交通機関でのアクセスを紹介します。
- 広河原
- JR甲府駅から山梨交通の「南アルプス登山バス」広河原行きで約2時間、終点の広河原で下車
- 運行期間は例年6月下旬~11月上旬(運行期間、曜日によって便数が異なる)
- 公式Webサイト: 山梨交通 広河原
トップシーズン(7月中旬~お盆明け)と土休日には、甲府駅を午前4時半頃、午前7時頃に出るバスもあります。甲府駅近くに前泊して、早朝のバスを利用すれば、当日中に北岳に登頂することもできます。
一方、トップシーズン以外の平日は、前述のように初便が午前9時過ぎで、広河原への到着が11時頃になります。健脚なら肩ノ小屋や北岳山荘まで行けなくもないですが、白根御池小屋で一泊するのが安全です。あるいは、登山口となる広河原のバス停前にある「広河原山荘」に前泊してもよいでしょう。
なお、甲府駅~広河原のバスは、街中を走っているふつうの路線バスです。これに2時間乗ることになりますので、座れないとツラいです。早めにバス停に行って並びましょう。
【広河原~白根御池小屋】樹林帯の急な登りで白根御池小屋へ
広河原の登山口を出発して、樹林帯に入ると、ほどなく登りとなります。それなりに急な登りがずっと続きます。ところどころにあるベンチで休憩しつつ、2時間ほどで白根御池小屋に到着しました。
広河原インフォメーションセンターで支度をして出発!
甲府駅を9時05分に出発するバスに乗車。午前11時前に広河原に到着しました。平日でしたが、甲府駅出発時点で数名の立ち客が出るほど。途中の芦安駐車場からも数名の乗車がありました。「あずさ1号」でやってきて、早めに並んだので、余裕で座れました。
バス停の前には「広河原山荘」があります。山小屋として宿泊もできますし、テント泊もできるようです。お風呂もあるので、前泊するのであれば、広河原山荘が良いかもしれません。
なお、広河原山荘の1階は食堂になっていて、トイレや自販機、お土産もありました。
広河原山荘とロータリーを挟んで反対側には、「広河原インフォメーションセンター」があります。登山情報や天気情報を入手できますし、登山届もここで出していくことができます。
1階のベンチで支度をして、トイレを済ませます。インフォメーションセンターの外にある水場で水を汲んで出発です。
吊り橋を渡って樹林帯の登山道へ
広河原インフォメーションセンターのすぐ裏手にあるこの林道入口から、林道をほんの少し歩いて、吊り橋を渡ります。
野呂川にかかる吊り橋はそれなりに長く、そして、かなり揺れます。
吊り橋を渡りきると、古い木造の建物があります。これが旧広河原山荘のようです。バス停の近くにある広河原山荘は、2022年に新築されたもので、とてもきれいなのですが、2021年まではこちらが広河原山荘だったようですね。
旧広河原山荘の近くにある登山口から、登山道へ入ります。最初は緩やかな樹林帯を歩いていきます。
樹林帯が涼しげに見えますが、この日も甲府では35℃の猛暑日。標高1,500メートルの広河原は、多少は涼しいですが、すでにお昼前。今日は暑さとの戦いになりそうです。
緩い登りはすぐに終わり、かなりしっかりとした登りになります。樹林帯の登山道はよく整備されていて、危険なところはありませんので、急ではありますが、歩きやすいです。段差が大きなところには、階段も整備されています。
ひとしきり登ると、少し開けたところに出ました。ベンチがいくつかあるので、ここで水分補給の休憩をとることにします。
やはり急な登りになると汗が吹き出てきます。登りとしては、2日目の草すべりのほうが急でしたが、標高が低い分、広河原から白根御池小屋までの登りのほうが暑かったですね……。
急な登りで白根御池小屋へ
先ほどのベンチがあるところから先は、さらに急になります。階段の角度も急! 意識的にゆっくりと登っていくようにします。
しばらく急な道を登ると、この道標があるところから、比較的平坦に道になります。一気に登って、白根御池小屋までは山腹を平行移動していくような感じになっています。
このあたりは樹林帯なので、高山植物はあまり咲いていませんが、日当たりの良い登山道脇には青紫色が鮮やかなトリカブトの花が咲いていました。
広河原の登山口から約2時間で、白根御池小屋に到着しました。距離は3km弱と短いですが、標高差は700メートルくらいありますので、やはり急な登りといっても良いのでしょうね。
【白根御池小屋】小屋前でくつろいで早めの就寝
さっそく受付を済ませ、寝床へ。相部屋ですが、上の写真のようにしっかりとした仕切りがあって隣の人が気にならないですし、頭上にちょっとしたものを置ける棚もあるので、なかなか快適でした。
汗でびしょびしょになったウェア類を脱いで、長袖のTシャツに着替えます。汗でぬれたウェアは乾燥室へ。
小屋の自販機で缶ビール(600円)を購入。持参したおつまみを持って、小屋の外のテーブルでのんびりします。先に到着されていたソロの方と、飲みながらしばし歓談。思ったよりも早く着いてしまったので、2時間近くも小屋の外でまったりとしてしまいました。
曇りで日が遮られているのもありますが、さすがに標高2,200メートルともなると涼しいです。夕方になると、長袖Tシャツ1枚では寒くなってきました。
白根御池小屋の横には「白根御池」という小さな池があります。その周囲はテント場になっていて、すでにテントがいくつか建っていました。
バスで広河原に到着した時から、ずっと北岳には雲がかかっていたのですが、夕方になって、雲の切れ間からようやくその姿を拝むことができました。このあとは、雲に隠れたり、また現れたりといった感じでした。
白根御池小屋の前から見ると、見上げるほどの高さですが、明日はあの山頂まで登らないといけないのですね。
夕食は17時50分から。宿泊者が多かったためか、2回に分けられていて、その2回目でした。メインのおかずは生姜焼きです。味付けが濃く、ごはんが進みます。ごはん、お味噌汁をおかわりして、お腹いっぱいになりました。
消灯は20時。夜中に何度か目が覚めましたが、それなりによく眠ることができました。
【草すべり~北岳】草すべりの急登を登り北岳山頂へ!
翌日、2日目は、山小屋で朝食を食べたあと、午前6時前に出発。草すべりの急登を登り、稜線に出たあとは、北岳肩ノ小屋で休憩を取って、北岳山頂にアタックします。お昼前から霧やにわか雨の予報でしたが、午前中の早い時間に登頂できたこともあって、山頂からの絶景を楽しむことができました。
午前6時前に白根御池小屋を出発!
午前4時過ぎに起床。午前5時前から朝食でした。朝食のおかずは少なめですが、ふだんあまり朝食を多く食べないほうなので、これで十分です。
朝食後にカメラを持って外に出てみると、東の方角は視界がなくて日の出を見ることはできませんでしたが、朝日が北岳に当たって赤く染まっていました。昨日は雲に隠れていた北岳ですが、この時間はきれいに見えています。
今日の天気予報は、朝は晴れですが、お昼前から曇りや霧、にわか雨があるかもしれないという予報。今日の目的地は北岳山荘ですが、お天気がもってくれればいいのですが……。
部屋に戻り、支度を済ませて、午前5時45分頃に白根御池小屋を出発します。
白根御池小屋からのルートは2つ。上の写真にあるように、白根御池の横のお花畑を登っていく草すべりのルートと、左俣コースから八本歯ノコルを経由するコースです。後者は北岳の南側に出てしまうので、北岳の山頂を目指すなら、草すべりのほうが近いです。ということで、草すべりルートを登ります。
高山植物を眺めながらお花畑を登る
白根御池小屋から草すべりへの登山道に入ると、すぐにお花畑が広がっています。8月下旬のこの時期は、一面に黄色いお花が咲いています。キオンの花でしょうか? もう終わりかけのようでした。
こんなお花畑の中の道を登っていきます。
高山植物の最盛期は過ぎてしまいましたが、登山道脇にはまだいろいろな花が見られます。この黄色いお花はミヤマキンポウゲかな?
シソの仲間のミソガワソウ。
おなじみのハクサンフウロ。
お花畑といっても、斜面に広がっていて、かなり急なところを登っていきます。地図を見ても、等高線に垂直に登山道が引かれています。朝早いので、写真を撮りつつゆっくりと登っていきます。
「草すべり」の急登を登りきって稜線へ
お花畑が終わると、樹林帯に入ります。登山道はさらに急になります。このあたりからが「草すべり」なのでしょうか? 登山道は斜面に対してジグザグに付けられていますが、それでもかなり急な登りです。
樹林帯に入ると高山植物は少なくなってしまいますが、日当たりの良いところにはぽつぽつと咲いています。これはハクサンイチゲ。
樹林帯を30分くらい登ったでしょうか。次第に周囲が開けてきました。前方には北岳もしっかりと見えています。
斜面は草地になっていて、鹿除けの柵で覆われているところもあります。このあたりが「草すべり」の名前の由来でしょうかね?
右俣コースとの分岐(合流)に到着。標高は2,747メートルで、白根御池小屋から「草すべり」で標高差500メートル以上を登ってきたことになります。地図を見ると、稜線までもう少しのようです。
上の方に稜線が見えてきました。斜面は草で覆われていて、白いお花がちらほらと咲いています。もう少し早い時期だと、ここも高山植物でいっぱいになるのでしょうか?
南の方を見ると、雲海の向こうに富士山が見えてきました。かなり雲が湧いてきていますね。今日は南から湿った空気が入ってきて天気が悪くなる予報。あの雲がこちらまでやってこないうちに、北岳の山頂に登りたいところです。
草地からハイマツ帯に変わり、北側に甲斐駒ヶ岳も見えるようになりました。すぐ近くの山ですが、カッコいい形の山ですね。
北西側には仙丈ヶ岳。どっしりとしていますが、きれいな山ですね。
7時20分、稜線にある小太郎山への分岐に到着しました。白根御池小屋からは見上げる高さだった北岳も、かなり近くなってきました。まだ山頂がきれいに見えているので、早めに登りたいところ。休憩もそこそこに、出発します。
標高3,000メートルの北岳肩ノ小屋で小休止
北岳肩ノ小屋の少し手前にある急な岩の登りです。下ってくる方がたくさんいますが、北岳山荘か肩ノ小屋に泊まって、北岳に登頂したあと、これから下山するのでしょう。
先ほどの急な岩場を登りきると、やや平坦なところに出ます。前方には北岳肩ノ小屋も見えていますね。
7時45分、北岳肩ノ小屋に到着しました。白根御池小屋からちょうど2時間で肩ノ小屋まで登ることができました。北岳肩ノ小屋の標高は3,015メートル。白根御池小屋から標高差で800メートル近くを登ってきたことになります。
山頂アタックの前に、ザックを下ろして少し休憩します。水分補給とトイレ休憩です。まだきれいに北岳が見えています。
岩の急登を登りきって北岳に登頂!
さて、いよいよ北岳山頂にアタックします。肩ノ小屋の脇に登山道があります。
肩ノ小屋からすぐのところが、最も急な登りになっています。危険なところはありませんが、とにかく急なので、一歩一歩しっかりと登っていきます。標高が高いせいもあって、息がすぐに切れます。立ち止まって、息を整えつつ、少しずつ登っていくことにします。
こんな感じのところをしばらく登っていきます。
肩ノ小屋からの急登を登りきると、分岐に出ます。両俣小屋へ下る道のようですが、現在は通行止めのようです。
岩陰にはイワギキョウが咲いていました。標高3000メートル超えの厳しい自然の中でも、しっかりと花を咲かせています。
北岳の山頂が見えてきました! あと少し!
午前8時20分、北岳山頂に登頂! 白根御池小屋から約2時間半で登ることができました。
【北岳山頂】日本第2位の頂からの大展望!
低いところに雲がかかり始めていましたが、幸い、北岳山頂からの眺望には影響がありません。堂々の日本第2位、標高3,193メートルからの大展望を満喫しましょう!
山頂から南側には富士山! 北アルプスではほとんど見えないか、すごく小さくしか見えない富士山ですが、ここは南アルプス。日本第2位の高峰から、日本の最高峰、富士山を眺めることができました。
こちらから眺める富士山は、両側のすそ野をきれいに引いていて、とても美しい! まさにシンメトリー。
北東には鳳凰三山が見えます。すぐ近くの山ですので、形もよくわかります。地蔵岳のオベリスクもしっかり見えていますね。鳳凰三山の奥の山並みは奥秩父のあたりでしょう。
鳳凰三山の左側(北側)の少し奥には、八ヶ岳が見えます。この位置からだと、右側から権現岳・赤岳から、左側の蓼科山へと続く八ヶ岳の稜線がよくわかりますね。
そういえば、昨年の夏、権現岳に登った時に、正面に見える南アルプスに感動したのを思い出しました。正面に北岳や甲斐駒ヶ岳が見えていましたが、今は、逆側から八ヶ岳を見ているわけですね。
山梨百名山の標柱の奥には、中央アルプスの山々。その後ろには御嶽山まで見えていますね。本当に素晴らしい眺望です。
北岳の山頂にある三等三角点「白根岳」。北岳の標高は、正確には3,192.52メートルなのだそうです。
そして、北岳から南側へ続く白根三山の稜線。左奥の最も高い山が間ノ岳です。北岳に次ぐ日本第3位の標高を誇る山です。そして、この北岳から続く稜線は、日本で唯一の3,000メートル越えの縦走路です。
もう少しのんびりと景色を眺めようと思っていたのですが、間ノ岳までの稜線上にまだ雲がかかっていないの見て、このまま間ノ岳まで往復することにしました。
北岳山頂には、明朝、下山する前に寄って、もう一度、この絶景を楽しむことにしましょう。
今回の記事はここまで。北岳から間ノ岳への3,000メートル超えの縦走路を歩く様子と、北岳山荘での宿泊、そして、3日目の朝に再び北岳に登頂してから下山するまでの様子は、以下の記事をご覧ください。
以上、「【北岳】北岳山頂からの絶景と間ノ岳への3000メートル級縦走路を歩く山旅! ~北岳登頂編~」でした。早い時間に北岳に登頂できたため、雲がかかるま前に山頂からの大展望を満喫することができました。
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