大菩薩嶺の南側から南北に連なる小金沢連嶺を歩いてきました。小金沢山~牛奥ノ雁ガ腹摺山~大蔵高丸~ハマイバ丸と、秀麗富嶽十二景に指定されている4座をつないで歩く絶景コースです。素晴らしい好天に恵まれて、終始、富士山や南アルプスを眺めながらの楽しい稜線歩きとなりました。
小金沢連嶺(甲州アルプス)の眺望の良い稜線を歩く!
小金沢連嶺は、大菩薩峠から滝子山まで、南北に連なる標高2000メートル級の山並みです。大菩薩嶺~大菩薩峠もあわせて、甲州アルプスとも呼ばれているそうです。
小金沢連嶺の魅力は、何といっても富士山や南アルプスの眺望です。小金沢連嶺の山並みは富士山の北側に南北に連なっています。北から南へ向かえば、ずっと目の前に富士山を眺めながら歩けるのです。西側には甲府盆地と南アルプス、八ヶ岳も見えます。
そして、このコースには、北から南へ向けて、小金沢山、牛奥ノ雁ガ腹摺山、大蔵高丸、ハマイバ丸、滝子山と、秀麗富嶽十二景の山々がたくさんあります。今回はこのうち、小金沢山からハマイバ丸までの4座をつないで歩いてみました。
今回歩いたコースを地図上に示してみると、以下のようになります。
上日川峠の手前にある「小屋平」のバス停から登り、石丸峠で小金沢連嶺の稜線に出ます。その後は、小金沢山~牛奥ノ雁ガ腹摺山~大蔵高丸~ハマイバ丸とつなぎ、米背負峠からやまと天目山温泉に下りました。
小金沢山からハマイバ丸までの小金沢連嶺の山並みが、ほぼ南北に連なっている様子がわかるかと思います。
今回の主な行程は以下のとおりです。
- 09:00 小屋平バス停 出発
- 09:50 石丸峠
- 10:40 小金沢山 到着
- 11:00 小金沢山 出発
- 11:20 牛奥ノ雁ガ腹摺山 到着
- 11:40 牛奥ノ雁ガ腹摺山 出発
- 12:20 黒岳 到着
- 12:40 黒岳 出発
- 12:50 白谷ノ丸
- 13:10 白谷小丸
- 13:30 湯ノ沢峠
- 13:55 大蔵高丸 到着
- 14:05 大蔵高丸 出発
- 14:25 ハマイバ丸 到着
- 14:35 ハマイバ丸 出発
- 15:10 米背負峠
- 15:40 登山口(以降、林道)
- 16:30 やまと天目山温泉 下山
距離20.6km、累積標高は上り1400メートル、下り2000メートルと、ひさびさにロングコースを歩きました。
コースタイムからだいぶ巻いて(YAMAPの記録だと170~190%)この時間ですから、日の短い時期に歩ききるのは難しいかもしれません。途中の湯ノ沢峠からやまと天目山温泉に下ると、13~14kmくらいの行程になりますので、湯ノ沢峠到着時点での時刻や体力で、先へ進むか下るかを判断するとよいと思います。今回も、湯ノ沢峠から下るルートをエスケープルートの候補として考えていました。
小金沢連嶺登山口への公共交通機関でのアクセス
小金沢連嶺の主要な山への公共交通機関でのアクセス方法を紹介します。
小金沢連嶺の主な山へは、JR中央本線の甲斐大和駅から栄和交通が運行する「大菩薩上日川峠線」というバスに乗車します。
- 小金沢山(石丸峠経由)
- 甲斐大和駅から栄和交通「大菩薩上日川峠線」に乗車、「小屋平」バス停で下車
- 牛奥ノ雁ガ腹摺山
- 甲斐大和駅から栄和交通「大菩薩上日川峠線」に乗車、「すずらん昆虫館前」バス停で下車
栄和交通の「大菩薩上日川峠線」は、毎年4月中旬~12月上旬の土休日と、特定の平日のみ運行されます。土休日は5往復、平日は3往復のみです。運行日とバスの時刻については、栄和交通のWebサイトをご確認ください。
また、湯ノ沢峠や米背負峠へは、「やまと天目山温泉」から林道経由でアクセスできます。湯ノ沢峠からは大蔵高丸へ、米背負峠からはハマイバ丸に登ることができます。
ただし、林道歩きがかなり長いので、登りに使うことはおすすめしません。下山で利用し、やまと天目山温泉で温泉に入るのがおすすめです。やまと天目山温泉からであれば、前述の栄和交通のバス以外に、甲州市民バスも運行されています。
甲州市民バスの時刻や運行経路については、甲州市のWebサイトをご確認ください。以下のページから「甲州市(塩山・勝沼・大和)縦断線」の時刻表を見ることができます。
【小屋平~小金沢山】樹林帯を登って笹原が広がる絶景の稜線へ!
小屋平バス停を出発、樹林帯を登りきると笹原が広がる石丸峠に出ます。富士山、南アルプス、甲府盆地に加えて、大菩薩湖まで眺められます。再び樹林帯に入って、苔生す登山道を登っていくと、最初のピーク、小金沢山に到着です。
小屋平バス停を出発、樹林帯の急登を登る!
甲斐大和駅から乗車したバスは平日にもかかわらず満員御礼。臨時便は出ないそうで、発車時刻ぎりぎりに乗り込んできた人たちは、補助席を使わずに通路に立ったままでした。
午前9時前に小屋平バス停に到着。数名が下車しましたが、大部分の乗客は上日川峠まで行くようです。軽く支度を済ませて、出発します。
バス停の横にある登山口から登り始めます。カラマツ林と笹の登山道を、直登に近い形で登っていきます。昨日の雨の影響か、ところどころぬかるんでいました。
登山道脇には、あちこちでスミレが咲いていました。
20分ほど急登を登ると林道のような砂利道に出ます。少しだけこの林道を歩いていきますが、すぐに左側に登山道の入口が見えてきます。
引き続きカラマツ林の中を登っていきますが、先ほどよりは傾斜が緩やかです。周囲も次第に明るくなってきて、眺望にも期待がかかります。
登り始めてまだ30分ほどですが、西側が開けたところからは富士山がきれいに見えました。昨日の雨で空気中の塵が洗い流されたのか、4月とは思えないほど澄み切った空気。富士山もくっきり見えました。
笹原が広がる気持ちの良い道で石丸峠へ
さらに傾斜は緩やかになり、山腹に付けられた道を歩いていきます。周囲は相変わらずのカラマツ林。秋の紅葉はきっと素晴らしいでしょう。
しばらくカラマツ林の中を歩いていくと、右側が開けたところからは、最初の目的地、小金沢山が見えてきました。その右奥には富士山も! このお天気だと、小金沢連嶺の各ピークからの眺望も期待して良さそうです。
カラマツ林を抜けると、素晴らしい景色に出会うことができました。大菩薩湖の向こうには甲府盆地。そして、その甲府盆地の奥に、絶壁のように立ちはだかる南アルプス! 左側には富士山まで見えています。
樹林帯からは完全に抜けて、広々とした笹原の道を行くと、石丸峠に到着です。大菩薩峠からの道と合流します。
石丸峠から北側を見ると、小高い山が見えます。この山が、大菩薩峠と石丸峠の間にある熊沢山です。南側はこのような広々とした笹原になっていますが、北側は苔生した岩が多い樹林帯になっています。
絶景の笹原トレイルを歩く!
石丸峠から少し登り返すと、牛ノ寝通りへの分岐があります。
昨年のゴールデンウィークに、大菩薩嶺から小菅の湯まで、牛ノ寝通りを歩きました。牛ノ寝通りは眺望はほとんどないものの、ひたすら平坦な歩きやすい道が続きます。この時期は新緑がとてもきれいです。
天狗棚山という小ピーク付近からは、この絶景! 大菩薩湖と甲府盆地の向こうに南アルプスの名峰たちが勢ぞろいです。澄んだ空に、雪をたたえたアルプスの山並みは絵になりますね。
石丸峠から天狗棚山を経て、小金沢山の登り返しまでは、このような笹原の気持ちの良い稜線が続いています。
この絶景ポイントで休憩されている方も多くいました。ちょっと風が冷たかったですが、この眺望ですから、じっくりと眺めたくなりますね。
大菩薩嶺や大菩薩峠を歩いたあと、体力や時間に余裕があれば、このあたりまで足を延ばすと良いと思います。
苔生す樹林帯を登って小金沢山へ
笹原の絶景ポイントを過ぎると、再び登りになります。ここから小金沢山への登りにかかります。
笹原から樹林帯に入ると雰囲気が一変します。岩や木の根っこが多い道になります。
岩や石には苔がびっしりと付いていて、独特の雰囲気を醸し出しています。樹林帯に入ってすぐの取り付きはやや急ですが、ひと登りすると、ほぼ平坦になります。笹原から見上げた小金沢山は台形のような形をしていましたが、石丸峠からみると山頂は奥のほうにあるようです。
登山道脇には白いかわいらしいお花が咲いています。バイカオウレンでしょうか。土と苔の色が支配する樹林帯の中では、小さくてもとても目立ちます。
バス停から1時間40分ほどで、最初のピーク、小金沢山に到着! 標高2,014メートルは小金沢連嶺の最高峰で、今日のルート中でも最も高い場所になります。
秀麗富嶽十二景の絶景、小金沢山山頂からの眺望を満喫!
小金沢山は北側以外は眺望が開けていて、もっとも開けている南側には富士山をきれいに望むことができます。小金沢山は秀麗富嶽十二景の二番に選定されている山ですが、さすがに「秀麗」な富士山を見ることができます。
小金沢山の山頂はそれほど広くはありませんが、腰を掛けるのにちょうどよい岩がたくさんあるので、ここで軽く休憩していくことにしましょう。
朝、コンビニで買っておいたコロッケパンを食べました。この絶景を眺めながらの休憩は最高ですね。
もっとゆっくりしていきたいところですが、今日はまだまだ先が長いので、食べ終えて景色を堪能したらすぐに出発です。
【小金沢山~湯ノ沢峠】牛奥ノ雁ガ腹摺山・白谷ノ丸からの眺望が素晴らしい絶景ルートを歩く
小金沢山からは明るく開けた登山道を歩きます。あちこちから富士山や南アルプスを眺めることができる、まさに絶景ルートです。牛奥ノ雁ガ腹摺山はもちろんのこと、とても開放的でこのルートでも一番の眺望が広がる「白谷ノ丸」も素晴らしいです。
秀麗富嶽十二景「牛奥ノ雁ガ腹摺山」
次の目的地は、小金沢山とともに秀麗富嶽十二景の二番に選定されている「牛奥ノ雁ガ腹摺山」です。小金沢山からはすぐで、富士山の左側に見えている山です。
小金沢山から牛奥ノ雁ガ腹摺山までは、アップダウンが少なめで開放的な道が続きます。富士山を見ながら歩ける素晴らしい道です。
山頂からでなくても、こんなに素晴らしい富士山が目の前に! 小金沢連嶺縦走ルートの醍醐味ですね。
登山道脇にはバイカオウレンの花が咲いています。
あっという間に牛奥ノ雁ガ腹摺山に到着しました。「うしおくのがんがはらすりやま」と読みます。日本でもっとも長い山名なのだそうです。「雁ガ腹摺山」はこの界隈に三座あり、何も付かないノーマルの「雁ガ腹摺山」、最も南に位置する「笹子雁ガ腹摺山」、そしてこの「牛奥ノ雁ガ腹摺山」です。いずれも秀麗富嶽十二景に選ばれている山です。
まあそんなことはともかく、牛奥ノ雁ガ腹摺山からの富士山も見事です。富士山の手前左側に見える山並みは、これから歩く小金沢連嶺の稜線です。見えているのは次のピークの黒岳でしょう。名前のとおり、山頂まで樹林に覆われて黒々としています。
西側も開けていて、甲府盆地と南アルプスを見渡すことができます。山頂はやや傾斜がありますが、このように広々としています。すずらん昆虫館前のバス停から登ってこられた方にお会いしましたが、このあと小金沢山まで行くのだそうです。お天気が良ければ、この2座だけでも十分に満足できそうなほどの眺望です。
眺望のない黒岳で休憩
次のピーク、黒岳に向かいましょう。黒岳へは、いったん下ってから登り返しになります。牛奥ノ雁ガ腹摺山が1,990メートル、黒岳が1,987メートルですが、鞍部は約1,850メートル。標高差で150メートル近い登り返しとなります。
いったん下って登り返したところが「川胡桃沢の頭」です。ここまで登り返せば、あとは比較的緩やかな道が続きます。
尾根のやや西側に付けられた道を歩いていくと、大峠への分岐があります。大峠の登山口には公共交通機関はないのですが、車でアクセスすることができます。大峠からこの分岐までコースタイムで1時間半ほどです。大峠を挟んで東側には、ノーマルの?「雁ガ腹摺山」があります。
大峠の分岐からすぐに黒岳の山頂に到着しました。残念ながら眺望はありませんが、一等三角点があり、小さな広場になっています。ちょうどお昼ですし、ここで持参したおにぎりを食べました。
秀麗富嶽十二景でなくても今日一番の眺望!「白谷ノ丸」
黒岳から少し樹林帯の道を下ると、コバイケイソウが芽吹いている広場がありました。「広葉樹の森」と看板がありましたが、いまは全く葉がついていないので、とても明るいです。
広葉樹の森を抜けて少し登り返すと、一気に視界が開けます。ここが「白谷ノ丸」です。とても広々としていて、北側の狭い範囲以外はすべて眺望があります。富士山はもちろんのこと、これから歩く小金沢連嶺南部の山々の稜線がとても美しいです。
このあと、いったん湯ノ沢峠まで下ったあと、手前に見える稜線に登り返すことになります。
ここまであまり見えなかった東側もすっきり開けています。扇山や百蔵山など大月周辺の山々が良く見えました。一番奥に見える山並みは丹沢でしょうか。
西側の甲府盆地と南アルプスの眺望も素晴らしいです。白谷ノ丸で素晴らしい眺望を眺めつつ、写真を撮りました。
白い砂や小石がまるで砂浜のような「白谷小丸」
先に進む前に、白谷ノ丸から左下に見えていた「白谷小丸」に立ち寄ります。稜線の登山道から笹原の中の道を入れば、ものの5分ほどで到着します。
眺望は先ほどの白谷ノ丸からのものと大きくは変わりませんが、白谷小丸の一帯は地面が白っぽい砂や小石で覆われていて、まるで砂浜のように美しいです。
小金沢連嶺から眺める富士山は、すそ野のほうまできれいに見えるのがポイント高いですね。手前の小金沢連嶺の稜線や、その奥の三ッ峠山も良いアクセントになっていて、バランスよく見えるのも美しい理由だと思います。
白谷小丸でもしばらく景色を楽しんでから、湯ノ沢峠に向けて下り始めました。
急な下りで湯ノ沢峠へ
白谷小丸からは湯ノ沢峠へ下りますが、本格的な下りになる手前では、登山道からもこんなに素晴らしい富士山を眺めることができます。本当に眺望に優れたコースです。
湯ノ沢峠への下りはかなりの急坂。危険を感じるほどではないにせよ、やや滑りやすいところもあるので、慎重に下っていきます。
白谷小丸から20分くらい下ると、湯ノ沢峠に到着しました。湯ノ沢峠は登山道の十字路になっていて、西へ向かえば、林道を経由してやまと天目山温泉に下ることができます。
ここからやまと天目山温泉に下るルートをエスケープルートとして計画していましたが、時刻は13時半。体力的にもまだ大丈夫そうなので、計画通り、この先の大蔵高丸、ハマイバ丸に登ることにしましょう。
ちょっと物騒な看板がありました。湯ノ沢峠から大蔵高丸にかけてはお花畑が広がっていて、植生保護がされているのですが、その一環でシカの駆除が行われているのでしょうか。どう「注意」すればよいのかわかりませんが、注意することにします。
湯ノ沢峠からの分岐から少し西側へ行ったところに駐車場とトイレがあります。トイレは冬季閉鎖中で使えませんでしたが、時期的にそろそろ使えるようになる頃でしょう。
マイカー派の方は、ここまで車で入ってこられるようなので、白谷ノ丸や大蔵高丸、湯ノ沢峠付近のお花畑などを巡るには、湯ノ沢峠を起点にすると良いと思います。(林道はよく通行止めになるので、事前に確認することをおすすめします。)
【大蔵高丸~ハマイバ丸】見晴らしの良いお花畑を通り秀麗富嶽十二景3番の2座を巡る
湯ノ沢峠からは、高原のように見晴らしの良いお花畑を通って大蔵高丸に登ります。その後は稜線を歩いてハマイバ丸へ。秀麗富嶽十二景の三番に選定されている2座を巡ったあとは米背負峠から下山します。
湯ノ沢峠のお花畑を歩いて大蔵高丸へ
湯ノ沢峠の分岐に戻り、大蔵高丸へ向けて少し登ると、広々としたお花畑に出ます。この時期はまだほとんどお花は咲いていないため、ただの笹原になっていますが、高原のように開けていて気持ちの良い場所です。
植生保護のためか、フェンスで覆われていて、何か所も保護柵があります。登山道にも保護柵の扉が。シカなどの野生動物が入らないようにするためのものですので、通ったあとはしっかりと閉めていきます。
「湯ノ沢峠のお花畑」の標柱がありました。お花が咲くのは初夏から夏にかけてでしょう。前方には、次の目的地、大蔵高丸が見えてきました。
だいぶ南下してきたからか、ずっと手前の山並みの影になっていて見えなかった八ヶ岳も見えるようになってきました。まだ少し雪があるようですが、4月下旬でこの状況ですから、今年の雪融けは早そうですね。
お花畑エリアを過ぎると、大蔵高丸への登りが始まります。キツイ登り返しが待っているのかと思いきや、緩やかで歩きやすい道が続きます。登山道の周りにはシラカバが多いようで、白い幹が青空に映えて美しいです。思いのほか快適に歩けました。
シラカバ林を抜けると、再びお花畑が現れました。前方には山頂らしき場所も見えてきました。小金沢連嶺縦走の後半戦、疲れが溜まってくる時間帯ですが、そんな登山者に優しい大蔵高丸の登りで助かりました。
お花畑にはお花は見当たりませんが、登山道のすぐ脇には、黄色い小さな花がたくさん咲いています。キジムシロでしょうか? 黄色のお花は似たようなものがたくさんあって、素人の私には区別がつきません(笑)
広々とした山頂の大蔵高丸からの眺望を楽しむ
大蔵高丸山頂からの富士山です。山頂そのものはそれほど広くはないですが、周囲がお花畑になっていて眺望が効くため、とてもきれいに富士山を眺めることができます。
すでに14時を過ぎているせいか、誰もいません。
大蔵高丸からの富士山。秀麗富嶽十二景の三番に選定されているだけのことはありますね。素晴らしい眺めです。山頂付近に小さな雲がかかってきましたが、この時間になっても、まだきれいに見えています。北側から眺めるので、やや逆光気味ではありますが、本当に見事な富士山です。
西側には甲府盆地と南アルプス。石丸峠からずっと見えている景色ですが、だいぶ南側まで歩いてきたので、甲府盆地が良く見えるようになってきました。アップで見ると、本当に南アルプスが壁のように立ちはだかっていますね。
北側を振り返ってみると、今日歩いてきた山が見えます。左側の木がなく白っぽくなっているところが白谷ノ丸でしょう。右奥の山は、ノーマルの雁ガ腹摺山のようです。
快適な稜線歩きでハマイバ丸へ
時間もだいぶ遅くなってきましたので、名残惜しいですが、次のピークに向かいましょう。大蔵高丸山頂からしばらくは、このように開けたところを、富士山を正面に眺めながら歩きます。最高ですね。
しばらくすると樹林帯に入りますが、木々はまばらで明るいです。周囲も広々としていて、気持ちの良い山歩きが続きます。
ちょうど花期の真っ只中だったのか、登山道脇には黄色いお花がたくさん咲いています。気をつけて歩かないと踏みかねないところにも咲いています。
淡い青紫色のスミレもあちこちに咲いていました。広葉樹にはまだ葉がまったく付いていないですが、足元を見ると、少しずつ山の上にも春が訪れていることがわかります。
大蔵高丸から30分とかからずにハマイバ丸に到着しました。ハマイバ丸も、大蔵高丸とともに秀麗富嶽十二景の三番に選定されている、富士山ビューの山です。
ハマイバ丸の山頂はあまり開けていませんが、南側だけ眺望があります。そこからは素晴らしい富士山を眺めることができます。同じ方角から眺めているため、小金沢山からの眺めと大きな構図は変わらないですが、手前の山並みや三ッ峠山がどんどん大きく見えるようになってきます。
ハマイバ丸の山頂で富士山を眺めながら軽く休憩を取りました。
「ハマイバ丸」なんて面白い山名だなと思っていたら、山頂には漢字で「破魔射場丸」とありました。地元集落の人たちが、破魔矢を射る神事をここで行っていたことが山名の由来とのことです。由来自体はよくありそうな話ですが、「破魔射場」という漢字の圧がやや強いためでしょうか。「ハマイバ」とカタカナで表記されることが多いようです。
桜を眺めながらの稜線歩きで米背負峠へ
あとは下山をするだけですが、小金沢連嶺の稜線から下る道がある「米背負峠」までは、もうしばらく稜線を歩いていくことになります。ややアップダウンはありますが、開放的で気持ちの良い道です。
日当たりの良いところでは、黄色いお花の群生がありました。
ヤマザクラでしょうか。見事に咲いているサクラがぽつぽつとありました。まだつぼみの花も多かったので、これから満開になるのかもしれませんね。
登山道脇に咲くサクラです。東京の市街地と比べると、季節が1ヶ月半ほど遅い感じですね。登山道脇に咲く小さなお花やサクラ以外、ぱっと見では真冬と区別がつかないです。
緩やかなアップダウンが続きますが、この下りだけはやけに急でした。土が削れて流れてしまっているのでしょうか、とても滑りやすくて下るのに難儀しました。
開けたところから北側を見ると、雁ガ腹摺山が見えました。あちらは秀麗富嶽十二景の堂々たる「一番」です。その右側には、奥多摩三山の三頭山や大岳山まで見えますね。
登山道脇に咲くサクラと青空。とても気持ちの良い山歩きが続きます。まあ、緩いとはいえ、ここへきてのアップダウンは地味に堪えますが……。
見事に咲いているサクラの木がありました。先ほどのヤマザクラとは種類が違うようで、やや濃い色の小さめの花をたくさん咲かせていました。
途中に「天下石」なる大きな石がありました。石の下にある標識には「天下石山頂」とありますが、場所的に山頂っぽくはないですね……。
ハマイバ丸からしばらく緩やかなアップダウンの道が続いていましたが、一気に急な下りになりました。米背負峠へ向けての下りのようです。
急な下りは5分ほどで終わり、下り切ったところが「米背負峠」でした。ここから南側へ登り返すと、大谷ヶ丸~滝子山と小金沢連嶺の稜線が続いていますが、今日はここまで。米背負峠から西側へ下山します。
米背負峠からやまと天目山温泉へ下山
米背負峠からしばらくは山の斜面をジグザグに下っていきます。大きなブナの木が目立ちます。
沢まで下ってくると、登山口までは沢沿いを歩いていきます。
何度か渡渉があります。水が少なかったので問題ありませんでしたが、大雨のあとなどは渡渉が難しくなるかもしれません。
木の橋がかかっているところもありますが、いかにもヤバそうなので、横の岩の上を渡りました。
こちらの木の橋はギリギリ大丈夫でした(笑)
沢沿いでやや荒れ気味なこともあって、道がわかりづらいところが多々ありました。木にテープが巻かれているところが多いので、それを頼りに歩きました。沢の対岸にテープが見えるようなところもありましたので、道を見失ったら、対岸も含めてテープを探してみるのがよさそうです。幸い、谷になっている沢沿いの道なので、登山道を外れてもすぐに気がつくと思います。
米背負峠から30分ほどで登山道を抜け、ここから先は林道を下っていくことになります。林道はかなり長く1時間くらい歩いたと思います。
林道は舗装されていますが、途中までは、あちこちで土砂崩れや落石の跡があります。復旧されないまま放置されているようで、クルマは通れないようです。
林道の終わり近くには、トンネルがありました。それなりに長く、途中でカーブしているので、真っ暗で先が見えません。ヘッドライトを出して通りました。
林道を抜けると車道に出ます。今朝、甲斐大和駅からのバスで通ってきた道です。林道横のトンネルを抜けると、すぐにやまと天目山温泉です。このトンネルは照明も歩道もあるので安心です。
やまと天目山温泉で汗を流して温まってきました。ph10以上という国内でも屈指の高アルカリ泉で、入浴後はつるつるになります。
温泉に入ったあとは休憩室でビールを飲みながらのんびり。最終の甲州市民バスで甲斐大和駅へ戻って、電車を乗り継いで帰宅しました。
富士山を眺めながら気持ちの良い稜線を歩ける小金沢連嶺
ということで、小金沢連嶺の登山日記をお届けしました。
大菩薩嶺には二度登ったことがありますが、小金沢連嶺は今回が初めて。それなりの眺望を期待していましたが、予想を大きく上回る絶景の連続に大満足の山行となりました。
小金沢山からハマイバ丸まで、笹原の開放的な道が多く、終始、富士山や南アルプスを眺めながらの山歩きを楽しめます。大菩薩嶺~大菩薩峠の眺望も素晴らしいですが、小金沢連嶺の各ピークからの富士山の眺めも負けていないです。大菩薩嶺よりもかなり人が少ないので、静かに山歩きを楽しみたい方にもおすすめです。
今回は小屋平バス停~やまと天目山温泉という比較的長いコースを歩きましたが、途中にいくつかバス停があるので、登りたい山や時間、体力に合わせてプランニングできるのもうれしいですね。
北側から順に稜線に上がることができるバス停を並べてみると……
- 上日川峠 → 大菩薩嶺・大菩薩峠
- 小屋平 → 石丸峠・小金沢山
- すずらん昆虫館前 → 牛奥ノ雁ガ腹摺山
- やまと天目山温泉 → 湯ノ沢峠・米背負峠
となります。湯ノ沢峠か米背負峠~やまと天目山温泉のルートは林道歩きがかなり長いので、下りに使って、下山後即温泉とするのがよいと思います。
小屋平バス停~石丸峠~小金沢山~牛奥ノ雁ガ腹摺山~すずらん昆虫館前バス停というルートなら比較的距離が短いので初心者でも歩けます。物足りなければ、湯ノ沢峠まで歩いてやまと天目山温泉に下るルートにすれば、白谷ノ丸からの絶景も眺めることができます。
富士山が見える晴れた(できれば空気が澄んだ)日に歩くことをおすすめします。
今回の主な登山装備
- メリノウールの半袖アンダーシャツ(モンベル)
- 化繊の長袖シャツ(ワークマン)
- 薄手のシェル(ワークマン)
- トレッキングパンツ(モンベル)
- 登山靴(モンベル アルパインクルーザー2300)
- ザック(グレゴリー ZULU30)
- レインウェア上下 ※利用せず
- 膝サポーター(ザムスト EK-3)
- 飲み物(アクエリアス1000ml+ペットボトル500ml×2本)
- お昼ご飯(パン1個、おにぎり1個)、行動食
- ファーストエイドキット
- ヘッドライト
ひさびさの標高2000メートル級ということで、少し寒いかと思っていましたが、行動中は半袖のアンダーシャツと化繊の長袖シャツ2枚で十分でした。さすがに風が冷たいので、休憩中は必要に応じて薄手のシェルを羽織りました。
うっかりしていたのが日焼けです。まだ4月だし大丈夫だろうと思って日焼け止めをもっていかなかったら、少し焼けてしまいました。ほとんど雲がかからない良いお天気だったのに加えて、ずっと南向きに歩くコースで、日光を正面から受けながら歩いたせいでしょう。もう紫外線が強い時期ですし、2000メートル級ともなれば地上よりもさらに紫外線が多いはずなので、今後は日焼け対策を忘れないようにしないといけませんね。
以上、「【小金沢連嶺】秀麗富嶽十二景を小金沢山~ハマイバ丸までつなぐ、富士山を眺めながらの絶景トレイル!」でした。富士山はもちろんですが、南アルプスや甲府盆地の眺めも素晴らしい絶景稜線コースです。このエリアに最初に行くなら大菩薩嶺がおすすめですが、2度目は小金沢連嶺を歩いてみてはいかがでしょうか。
関連記事
秋の大菩薩嶺~大菩薩峠を歩いた時の登山日記です。麓の紅葉や、稜線からのカラマツの紅葉と富士山の眺めが素晴らしかったです。
ゴールデンウィークに、大菩薩嶺から牛ノ寝通りを小菅の湯まで歩いてきたときの記録です。牛ノ寝通りは眺望はまったくありませんが、ゴールデンウィークの時期は新緑がとてもきれいです。ゴールデンウィークでも歩く人が少なく、静かな山歩きを楽しめました。
秀麗富嶽十二景の山々の登山日記です。小金沢連嶺の南端にある滝子山の記事もあります。
コメント