秀麗富嶽十二景の一つ「滝子山」に登ってきました。山頂からの富士山の眺めも素晴らしいのですが、この山の真骨頂は「すみ沢」という沢沿いの山歩き! あちこちにある小さな滝を眺めつつ、沢の水音を聞きながら歩く登山道は、とても素晴らしいものでした。
秀麗富嶽十二景「滝子山」とは?
滝子山(たきごやま)は、山梨県大月市にある標高1,620メートルの山です。大菩薩山系の南端に位置し、中央本線や中央道からもよく見えます。
滝子山は大月市が定める富士山ビューの山「秀麗富嶽十二景」の一つです。山頂からの富士山の眺めが素晴らしい山です。
ただ、それだけではありません。「すみ沢」という沢沿いの登山道がとても楽しいのです。標高1,400メートル近くまでずっと沢沿いの道が続き、あちこちに大小の滝があります。沢の流れる音を聞きながら、気がついたら山頂の直下まで来ていた、そんな感じでした。
今回の山行ルートは上のようになっています。
中央本線の笹子駅を出発、桜森林公園から林道を歩き、道証(みちあかし)地蔵のところにある登山口から滝子山へ登ります。ここから先、標高1,400メートル近くまで「すみ沢」という沢沿いの登山道を登っていきます。沢から離れて少し登るともう山頂です。
下山は、滝子山の南東側の樹林帯を下って、中央本線の初狩駅へ下ります。駅から登って駅へ下りられる、公共交通機関でのアクセスが抜群によいルートです。
今回の行程は以下のとおりです。
- 08:15 笹子駅 出発
- 09:10 滝子山登山口(道証地蔵)
- 11:20 滝子山山頂 到着
- 12:25 滝子山山頂 出発
- 15:00 初狩駅 到着
滝子山登山口への公共交通機関でのアクセス
滝子山へは、中央本線の笹子駅または初狩駅から登ることができます。いずれも、駅から歩いて登山口までアクセスできますので、路線バスに乗る必要はありません。
笹子駅、初狩駅ともに特急列車は停車しませんので、普通列車でアクセスしましょう。列車の本数は1時間に1本程度と少ないので、事前に乗り継ぎを調べておくことをおすすめします。
笹子駅、初狩駅のどちらからでも登ることができますが、おすすめは笹子駅から登るルートです。「すみ沢」沿いの登山道は、歩いていてとても楽しいですし、急登もほとんどありません。
笹子駅から滝子山に向けてスタート!
自宅を午前5時台の電車で出発し、笹子駅には午前8時前に到着。列車の本数が少ないせいか、ゴールデンウィークのせいか、同じ列車から10名以上の登山者が下車しました。
駅前では山梨県警が「登山届を出してください」と、様式とペンを貸し出していましたので、ここで提出。準備を整えてから出発です。
駅前から国道20号線を東へ向けて15分くらい歩くと、吉久保入口のバス停があります。ここを左へ。写真にも写っていますが、「滝子山」という道標があちこちにあるので、それを目印に歩けば間違うことはないでしょう。
中央道の上を渡る陸橋からは、正面に滝子山が見えています。なかなかに堂々とした山容ですね。
笹子駅から30分弱で林道(?)の入口がありました。この門は手で開きますので、開けて先へ進みます。
先ほどの門から15分ほど歩くと、「寂ショウ尾根」経由のルートの分岐があります。寂ショウ尾根は滝子山の南側の尾根で、最短距離で山頂まで登ることができますが、岩場が多く中級者以上向けとのことなのでスルーします。
しばらくアスファルトの道を歩きますが、横には大鹿川という川が流れています。先ほど国道20号線から山のほうへ曲がったあたりで笹子川に合流する小さな川です。これから登る登山道に沿って流れている「すみ沢」も、この大鹿川の支流です。
笹子駅から約1時間で、滝子山登山口に到着しました。ここから先は、いよいよ沢沿いの本格的な登山道になりますので、ここでもう一度登山靴の靴ひもを締め直し、水分補給をして先へ行きましょう。
小さな滝が連続する「すみ沢」沿いの登山道を歩く
登山道に入ると、すぐに沢の近くまで下りていき、その沢を木の橋で渡ります。驚くほど水がきれいでした。
沢から少し離れた登山道では、新緑が鮮やか! 常緑針葉樹の濃い緑色と、落葉広葉樹の新緑の対比が美しいです。
再び沢沿いの道へ。登山道のすぐ近くで沢が流れているので、その音を聞きながら歩いていきます。新緑とあいまって、とても気持ちの良い山歩きです。
登山道はこんな感じ。沢が登山道のすぐ近くを流れているのがわかると思います。落ち葉がすごいですが、これから気温が上がっていくと分解されていくのでしょう。
すみ沢沿いの見どころのひとつ「三丈の滝」です。それほど大きな滝ではないですが、何段かに分かれて流れ落ちる様子に目を奪われます。ここで写真を撮っている方が多かったですね。
「三丈の滝」から先も、これでもかというくらい沢と小さな滝が続きます。登山道はそれなりに登りもあるのですが、沢を眺めながら歩いていると、不思議とキツくないのですよね。沢の癒し効果なのかもしれません。
少し沢から離れて、急な斜面をジグザグに登っていきます。落ち葉が多くてちょっと滑りやすいので注意。でも、急なのはココと山頂直下くらいですね。
沢沿いの「難路」コースへ! 大きめの滝が迎えてくれます!
斜面を登りきると分岐があります。迂回ルートと難路がありますが、沢沿いは難路のほうです。ここは難路にチャレンジします。
早速、ロープが張られた岩場が出てきましたが、ここは短いので問題なくクリア。
沢の近くまで登山道が接近してきたところで、見事な滝がありました。今回のルートでは最も大きな滝でしょうか。滝の名前はよくわかりませんが、すぐ目の前で複数段に渡って流れ落ちる滝は、なかなか迫力がありました。ここで休憩がてら、しばし滝を眺めていました。マイナスイオンたっぷり(笑)
動画でもどうぞ。こちらのコースは歩く人が少ないようで、しばらく滝を眺めていましたが、誰も来ませんでした。こんな滝を独り占めできるなんて、贅沢ですね。
「難路」コースの一番の難所はココでしょうか。写真だとわかりづらいのですが、かなりの傾斜の斜面の、ほとんど道がないところを横切っていかなくてはなりません。ロープが張られていますが、かなり緩く、このロープを頼りに歩くことはできませんでした。滑り落ちそうになった時の緊急用ですね。とにかく、砂地の斜面を、滑り落ちないように踏ん張って渡りました。
少し先に進むと、大きな岩の表面を水が流れ落ちる場所がありました。「滝」というには斜度がないのですが、一枚岩の表面を滑り落ちるように流れる沢は見ごたえがあります。
横から見るとこんな感じです。
難路コースを抜け、迂回コースとの合流地点に休憩にちょうどよいスペースがありました。沢のすぐ近くで、沢を眺めながら休憩できます。
小腹が空いてきたので、持参したカロリーメイトを食べながら、しばし休憩。沢の流れる音に癒されます。
標高1400メートル近くまで続く滝子山の沢沿いの道!
行動食をとって万全の態勢で先へ進みましょう。ここから先、しばらくは沢から離れて樹林帯の道を進んでいきます。
山小屋か何かの跡でしょうか。完全に潰れてしまっていますが、残骸が残っていました。
5月初旬、標高1,300メートルを超えたところでも、遅い春がやってきているようです。標高が上がるにつれて、葉っぱをつけた木が少なくなっていきます。季節を遡っているみたいで、不思議な感覚に陥ります。
再び沢沿いへ。だいぶ上流側へ登ってきたためか、沢がかなり細く、静かな流れになっています。水がとてもきれいで、写真に撮ると水が流れているのかわからないくらい透き通っています。ちょっと触れてみましたが、さすがに冷たいですね。
苔むした岩の間を流れる沢。登山道のすぐ脇を流れているので、こんな風景を眺めながら歩くことができます。
気がつけば、すでに標高は1,300メートルを超えています。登山口のある標高800メートル付近から、標高1,400メートル近くまで、ずっと沢沿いを登ってきたことになります。
写真ではわかりにくいのですが、沢の流れの中に、キラキラと光る砂粒のようなものがありました。何かの金属の結晶でしょうか?
沢から離れて尾根沿いの道を登り滝子山山頂へ!
ここまでずっと登山道の脇を流れていた沢ともお別れ。山の斜面をジグザグに登っていきます。落ち葉に覆われたところも多くありました。
尾根のようなところに出ました。幅が広いのは防火帯にしてあるためでしょうか。おかげでかなり明るい道になっていますが、見かけよりも登りが急なので、ゆっくりと登っていきます。
少し登ったところで振り返ってみると、きれいな三角形の山が見えました。滝子山のお隣の山、大谷ヶ丸のようです。
さらに落ち葉に覆われた尾根道を登っていくと、遠くに雪をかぶった八ヶ岳も見えました。5月に入っても、山頂付近はかなり雪があるのですね。ゴールデンウィークは吹雪だったようなので、積雪が増えてしまったということかもしれません。
尾根道から滝子山山頂へ向けての登りに入ると、小さな神社がありました。ここまでくれば、山頂まではあと一息です。
山頂直下の急登! とはいえ、短いので、ゆっくり登れば問題ありません。ここまで急登らしい急登はありませんでした。「急登」といえるのは、この山頂直下のわずかな区間だけかもしれません。気がつけば、標高差1,000メートルを登り切っていた、そんな印象です。
富士山の眺望抜群の滝子山山頂!
11時30分、笹子駅から3時間ちょっとで滝子山山頂に到着! 山頂からは富士山がどーんと見えます。富士山の手前の山は三ツ峠山ですね。写真ではわかりにくいですが、山頂にあるアンテナが見えました。
これまで、大月より東側にある扇山や百蔵山、高畑山などの秀麗富嶽十二景の山に登ってきました。どの山から見る富士山も素晴らしいのですが、滝子山山頂から眺める富士山は迫力がありますね。標高が1,600メートルと高いので、富士山の下のほうまで見えています。
滝子山の山頂はあまり広くはありません。すでに大勢の登山客で賑わっていましたが、空いている場所を見つけてランチタイム。恒例のカップヌードルです。もう何度目かわからない山頂でのカップヌードルですが、富士山を眺めながら食べると格別ですね。
滝子山山頂は、富士山が見える南側だけでなく、北側の眺望も開けています。北側には、滝子山から続く大菩薩山系の山々の尾根筋が見えます。真ん中にみえる丸っこい山頂の山が大菩薩嶺です。初心者でも登れる日本百名山、2000メートル峰の大菩薩嶺からの眺望も素晴らしいです。
滝子山山頂からの景色が素晴らしく、天気も最高に良かったので、山頂コーヒーも楽しみました。風が吹くとややひんやりしますが、日差しは暑いくらいです。
富士山の東側には、存在感抜群の御正体山も見えました。
滝子山の山頂からは、西側以外は眺望が開けているので、ずっと景色を眺めているだけでも飽きません。天気が良くて気持ちよかったですし、予定よりもだいぶ早く山頂に着いたのもあって、1時間くらい山頂でのんびりとしていました。
滝子山東峰の三角点を経由して樹林帯を下る
ずっと山頂でのんびりしていたかったのですが、続々と登ってくる人がいて、山頂がだいぶ混雑してきましたので、12時半過ぎに下山を開始します。
山頂直下の急坂を下り、すみ沢経由で登ってきたルートとの合流点に到着。初狩駅へ下山するので、この分岐を直進します。
分岐から少し進んだところに、ひっそりと三角点がありました。滝子山には3つのピークがあるらしく、先ほどの山頂は、3つのうち真ん中にあり最も高いピーク。この三角点があるところは、東側のピーク(東峰)だそうです。標高は1,590メートル。真ん中のピークよりも30メートル低くなっています。
東峰のピークからは、滝子山の南側斜面を下っていきます。最初のうちは結構な急坂なので、滑らないように慎重に下ります。
登山道の脇には小さな花がたくさんさいていました。山頂付近は、芽吹き始めの木々が多い中で、小さな花が春の訪れを告げています。
この時期、目立つのはツツジですね。山の斜面のところどころに咲いていて、鮮やかな色が目を引きます。
分岐に到着。男坂と女坂があり、どちらを下ってもこの先で合流するようです。どっちでもよかったのですが、おそらく傾斜が緩いであろう女坂を選択。
ここで、女坂から登ってきたソロの男性としばし立ち話。ややお疲れのようでしたが、「この山はなかなかいいね。いろいろな木があって」と仰っていました。すみ沢沿いの道がいいですよとお伝えしたら、今度はそっちから登ってみよう、とのことでした。
女坂を下ること15分、「檜平」に到着。ここで、男坂と合流するようです。標高は1,336メートル、山頂から300メートル近く下ってきたようです。広場になっていて気持ちよさそうだったので、ここで小休止します。
新緑のトンネルを経て沢沿いの道へ
檜平からしばらくは、新緑に囲まれた快適な道が続きます。こんな尾根道のようなところを歩いていきます。下りではありますが、急ではないので歩きやすいです。
15分ほど下ってきました。新緑がきれいで、風が気持ちよかったので、ここで再び休憩。水を飲み、行動食を少し食べました。それにしても、吹き抜ける風が気持ち良い!
初狩駅の電車が1時間に1本しかないので、ここで、初狩駅までのコースタイムと時刻表をにらめっこ。急げば間に合いそうな電車がありましたが、下りは急ぎたくないので、ここでしばらく時間調整することにしました。
15分ほどのんびり休憩して、下山再開です。ここから先は、山の斜面の樹林帯の道を、ジグザグに、ひたすら下っていきます。急いでも電車はないので、ゆっくり下ります。
ひとしきり下ると、沢沿いの道に出ました。やや荒れているところもありますが、それほど危険なところはなかったです。
標高がかなり下がってきたので、木々の緑が濃くなってきました。山頂付近の芽吹き始めの木とは異なり、鮮やかな新緑が生い茂っています。それと同時に、気温も上がってきたようで、だんだん暑くなってきました。
沢のすぐそばを歩いたり、何度か渡ったり。登りルートのすみ沢の水もきれいでしたが、こちらの沢の水もとてもきれいです。
14時30分、登山口まで下山して、車道に合流しました。が、初狩駅まではまだ2kmほどあります。
白いツツジが咲き誇る道路を下っていきます。山のふもとはもう初夏ですね。
中央道を超え、笹子川を渡ったところで振り返ると、先ほど登ってきた滝子山が堂々とそびえていました。たしかに3つピークがありますね。
初狩駅のすぐ近くには高川山も見えました。高川山も、秀麗富嶽十二景の一つですね。
15時過ぎ、初狩駅に到着。山頂から約2時間半で下山しました。電車の時間まで30分ほどあるので、自販機で飲み物を買ってクールダウン。もう日差しがかなり暑いですね。
富士山だけじゃない! 沢沿いの登山がとても楽しい「滝子山」
今回は、秀麗富嶽十二景の一つ、「滝子山」に登ってきました。
山頂からの富士山は、前評判どおり素晴らしかったのですが、この山の真骨頂は、やはり「すみ沢」沿いに連続するたくさんの滝を眺めながらの登山でしょう。スタートの笹子駅から滝子山山頂までの標高差は1,000メートルほどあるので、それほど楽な山ではないはずですが、急登が少ないせいか、あまり苦労せずに山頂まで登ることができました。沢の流れや滝が目を楽しませてくれるのもあり、気がつくとどんどん標高が上がっていくという感じです。
尾根道からの眺めもななかかですし、もちろん、山頂からの大展望も素晴らしいです。沢沿いの道とあわせて、いろいろな楽しみが詰まったルートでした。
標高差はそれなりにあるものの、途中の「難路」を迂回すれば、それほど危険なところはないので、技術的には初心者でも十分に登れる山だと思います。
今回の登山装備
- 化繊のTシャツ(モンベル)
- 長袖シャツ(ワークマン/Field Core)
- ライトシェルパーカ(モンベル)
- トレッキングパンツ(モンベル)
- メリノウールのタイツ(ワークマン)
- 登山用靴下(FITS)
- 登山靴(モンベル アルパインクルーザー2300)
- ザック(グレゴリー ZULU30)
- レインウェア上下
- 膝サポーター(ザムスト EK-3)
- トレッキングポール(シナノ)
- お湯を入れたサーモボトル 750ml(モンベル)
- 飲み物(ペットボトル500ml×2本)
今回から、いわゆる「ソフトシェル」というものを導入しました。モンベルの「ライトシェルパーカ」を購入。往路の電車の中や、山頂などでの休憩の時に着用しました。ザックの中に丸めて入れておいても、フリースほどかさばらないので、これからの季節は便利に使えそうです。
以上、「【秀麗富嶽十二景】富士山の眺めが素晴らしい「滝子山」、小さな滝を眺められる沢沿いの登山が楽しい!」でした。富士山の眺めも、沢沿いの爽やかな山歩きも楽しめる、一石二鳥の山。滝子山はそんな楽しい山でした。
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