12月下旬、晴天の日を待って、大月市が定める富士山ビューの山「秀麗富嶽十二景」のうち、扇山と百蔵山へ行ってきました。中央本線の駅から登れるアクセス抜群の低山ですが、この時期は富士山の眺めが最高なのです。
「秀麗富嶽十二景」の扇山・百蔵山とは?
「秀麗富嶽十二景」は、富士山を望むことのできる山として大月市が定めた12の山域です。いずれも大月市域にあり、中央本線の駅からのアクセスがよいのが特徴です。
「十二景」であり「十二山」ではないのですね。そのため、近くの複数の山で一つと数えられているところもあり、山の数としては12よりも多くなっています。
今回、登ってきたのは、「秀麗富嶽十二景」の六番「扇山」(おうぎやま)と、七番「百蔵山」(ももくらやま)の二つです。
この二つの山は、中央本線の北側に隣接しているため、一日で両方の山に登ることができます。駅でいえば、鳥沢駅~猿橋駅の間の北側に位置します。
今回は、鳥沢駅から出発し、扇山へ登り、その後、百蔵山へと縦走。猿橋駅へと下山するコースを選びました。
扇山は標高1,138メートル、百蔵山は標高1,003メートルです。いずれも低山ではありますが、鳥沢駅・猿橋駅の標高が300メートル前後ですので、700~800メートル程の標高差を登ることになります。
また、扇山~百蔵山の縦走路は、いったん、標高800メートルを切るところまで下りますので、登り返しが意外とキツいルートでもあります。今回のルートでは、全長15kmを超え、低山ながら、歩きごたえのある山行になりました。
今回の行程は以下のとおりです。
- 07:48 鳥沢駅 出発
- 08:45 扇山登山口
- 10:06 扇山山頂 到着
- 10:46 扇山山頂 出発
- 12:34 百蔵山山頂 到着
- 13:22 百蔵山山頂 出発
- 14:40 猿橋
- 15:05 猿橋駅 到着
下山時に、観光地の「猿橋」に寄り道したため、距離が少し長めになりました。
扇山・百蔵山への公共交通機関でのアクセス
前述のとおり、扇山、百蔵山ともに、中央本線の駅からアクセスできます。
扇山登山口の最寄り駅「鳥沢駅」
扇山登山口への最寄り駅は鳥沢駅。鳥沢駅から登山口までは、車道や林道を1時間程度歩く必要があります。扇山の登山口は梨ノ木平というところにあります。大月カントリークラブのすぐ近くですので、タクシーで行くこともできます。歩くのが面倒だったり、歩く距離を少しでも短くしたければ、タクシーを呼んでもよいでしょう。鳥沢駅にはタクシーは常駐していませんので、電話で呼ぶ必要があります。
また、登山口までは、季節限定・土休日運行の路線バスが1便だけあります。4月~12月中旬の運行のようです。詳しくは、富士急バスのWebサイトをご確認ください。
百蔵山登山口の最寄り駅「猿橋駅」
百蔵山登山口の最寄り駅は、鳥沢駅から一つ大月寄りの猿橋駅です。「猿橋」で有名な駅ですね。こちらも猿橋駅から登山口までは1時間弱かかります。
猿橋駅から百蔵山登山口の近くまでは、路線バスが出ています。ただし、本数が少ないため、時間が合わなければ歩いてしまったほうが早いでしょう。
また、百蔵山へは、猿橋駅から田無瀬・小菅の湯方面の路線バスに乗車して、「戸並入口」または「泉福寺前」で下車すれば、金毘羅宮経由のルートで百蔵山に登ることもできます。こちらは比較的バスの本数があります。詳しくは、富士急バスのWebサイトをご確認ください。
鳥沢駅、猿橋駅、ともに、中央本線の普通列車しか停車しません。新宿方面からは、高尾駅で乗り換えとなります。高尾駅から約30分、新宿駅からは乗り換えも含めて1時間半ほどです。
駅に到着したら、路線バスに乗らずに、すぐにスタートできますので、アクセスの良い山ですね。
鳥沢駅からスタート!
午前7時35分、中央本線の普通列車で鳥沢駅に到着しました。鳥沢駅は無人駅ですが、Suica(交通系ICカード)が使えます。駅から出るときに、Suicaをタッチする機械がありますので、忘れずにタッチしておきましょう。
駅前の広場にはきれいな公衆トイレもあります。トイレを済ませて、準備をしたら、早速出発です。
鳥沢駅のすぐ前の信号で国道20号線を渡って、真っすぐ北へと細い道を進みます。目の前には、これから登る扇山が見えていました。扇を広げたような形をした山なので扇山。その山名の由来がよくわかる形をしています。
車道・林道歩きで梨ノ木平の扇山登山口へ
扇山の登山口までは、しばらく車道や林道を歩いていきます。住宅の間を縫うように歩くため、何度か道を曲がりますが、迷いそうなところには「扇山」の道標が必ずありますので、道に迷う心配はなさそうです。
住宅街を抜け、車道に沿って少し登っていくと、扇山を一望できるポイントがありました。まさに「扇を広げた形」ですね。そのぶん幅が広く、低山ながら、堂々とした山容です。
一部で砂利道もありましたが、登山口までは、ほぼ舗装された道路が続いています。
西側が開けたところからは、扇山のお隣の山、百蔵山も見えました。こんもりとした緩やかな山容が印象的ですね。扇山に登ったあとは、この百蔵山へ向かいます。
30分ほど車道を歩くと、富士山が見えてきました。といっても、頭の部分だけですが。年末だというのに、雪が少ない富士山です。
ずっと車道歩きでしたが、ここからショートカットする道がありました。前に歩いていた数名は車道を進んでいたようでしたが、この近道を進んでみたいと思います。
落ち葉に覆われた道を進みます。ショートカットではありますが、車道を歩くのと時間的には大差なさそうです。少し登ると、すぐに車道に合流しましたので。
車道に沿ってしばらく歩くと、大月カントリークラブの入口があります。その入口を過ぎると、「梨ノ木平扇山登山口」というバス停があります。
バス停があるので、路線バスがあるのですが、季節限定・土休日のみの運行です。12月中旬~3月は運行していないようでした。
鳥沢駅からちょうど1時間くらいで、登山口に到着しました。
梨ノ木平の扇山登山口から登山道へ
扇山の登山口の前にはトイレがあります。この先、下山するまでトイレはないので、ここで済ませておきます。
登山口の近くには、木のベンチがたくさん設置されていました。ここでしばし休憩をとり、登山靴の靴ひもを締めなおして、登山の準備をします。
午前8時55分、登山口を出発して、本格的な登山道に入ります。
とはいっても、最初は緩やかな登り。とても歩きやすい道です。
だんだん急になっていきますが、登山道が整備されていて、とても歩きやすいです。序盤戦はこんな感じの歩きやすい登山道が続きます。
ジグザグの登山道を登り切って扇山山頂へ!
登山口から30分ほど登ると水場がありました。この先、水場はないようですが、まだ水はたくさん持っているのでスルー。
水場から先は、少し急な登りが続きます。大きな石や岩が増えてきますが、それほど歩きづらい感じではありませんでした。
この先は、扇山の中腹斜面にジグザグにつけられた登山道をひたすら登っていきます。それほど急登ではないですが、ずっと登りが続きますので、息を切らさないようにゆっくり登っていきます。
登山口から50分ほどで、富士山が見えるスポットに到着。ここで少し水を飲んで休憩します。登山口までの車道から頭だけ見えていた富士山と比べると、かなり下のほうまで見えるようになってきました。それだけ、標高を上げているということですね。
登山口から1時間ちょっとで、扇山~百蔵山の尾根に出ました。扇山の山頂へはここを右へ進んで約5分ほど。扇山山頂に到着後、休憩してから、またここまで戻ってきて、今度は百蔵山方面へ向かうわけです。
扇山の山頂までの最後のひと登り。それほど急ではないです。
富士山の景色が素晴らしい扇山の山頂で休憩!
!
午前10時06分頃、扇山の山頂に到着しました。南側の開けたところからは、富士山がバッチリ見えています。
中腹に少し雲がかかっている富士山も絵になりますね。雪がもう少しあると富士山らしくていいのですが、こればかりは仕方がないです。今冬は寒波はやってくるのですが、太平洋側では雨や雪が全然降らないので、富士山にも雪が積もらないようです。
扇山の山頂には木のベンチがいくつか置かれています。そのうちの一つを確保して、少し早めのランチタイム。恒例のカップヌードルです。富士山を眺めながらのカップヌードルは、何度食べても最高です!
扇山の山頂は、かなり大きな広場になっています。大人数で来ても、休憩する場所には困らないでしょう。
この日は、まだ時間が早かったせいか、到着したときには3~4名ほどしかいませんでしたが、休憩しているうちに、少し人が増えてきました。
心地よい扇山の山頂で40分ほど休憩しました。まだのんびりしていたい気分ですが、この先、百蔵山へも登る予定なので、そろそろ出発します。
百蔵山への縦走路、急坂続きで標高をどんどん下げる
10時45分ごろ、扇山山頂を出発。先ほど登ってきた分岐を、今度は百蔵山方面へ直進します。明るい尾根筋の登山道で、歩いているだけで気持ち良いですね。
10分ほどで大久保山というピークに到着。木々に囲まれていて眺望はありません。木に「大久保山」という標識が貼ってあるだけで、何もないので、先へ進みます。
ピークというからには、その先は下りになります。ここからしばらく、かなり急な坂を下っていきます。滑って転ばないように、慎重に下っていきます。
大久保山直後の急坂が終わっても、しばらくは下り基調の道が続きます。体力的には楽なのですが、このあと、当然、登り返しが待っています……
スマホのYAMAPアプリで標高を見ると、800メートルを切っていました。このあたりが鞍部でしょうか。このあと、登りになりそうなので、ここで少し休憩を取りました。近くに宮谷方面への分岐がありましたが、百蔵山方面へ進みます。
この後、やや登り基調に変わってきましたが、まだそれほど急ではありません。ということは、おそらく、山頂直下で一気に登るのでしょうね。
山頂直下の急登を登り切り、百蔵山山頂へ!
そして、予想どおり、百蔵山の山頂直下の急登が始まりました。落ち葉が多く、とても滑るので、ゆっくり登っていきます。
この時期ならではでしょうか。この落ち葉がとてもやっかいで、とにかく滑ります。それだけでなく、落ち葉の下の地面の様子が全くわかりません。小石に乗ってしまうと滑るので、足元を確かめながら、一歩一歩登ります。
かなりの急登なので、休みながら少しずつ登っていきました。
なんとか急登を登りきると、猿橋駅方面からの登山道への分岐点に到着。ここまでくれば、山頂まではあとわずかです。
12時半過ぎ、百蔵山の山頂に到着しました! ちょうどお昼時ということもあってか、山頂は大勢の人で賑わっていました。
扇山山頂から眺めたときよりも少し雲が増えましたが、まだしっかりと富士山が見えていました。ちょっと逆光気味なので、写真だとイマイチですが。
雪がほとんどない富士山に、山頂にはススキ。冬というよりも秋の風景ですね。
富士山が見えるスペースを確保して、山頂コーヒーを堪能! 富士山を眺めながらのコーヒータイム、最高に贅沢な時間です。
百蔵山山頂からは、南側の展望が開けています。富士山から左のほうへ目を移すと、丹沢の山々も一望できます。
富士山の右側には、11月に登ったばかりの三ツ峠山も見えています。その手前は大月のシンボル、岩殿山でしょうか。
百蔵山山頂の展望を動画でもどうぞ。山頂の南側の眺望です。
日差しが心地よく、風がほとんどない山頂はぽかぽか陽気。気持ちよくて、50分ほど居座ってしまいましたが、そろそろ下山しましょう。
百蔵山の西側の登山道から猿橋へ下山
百蔵山から猿橋駅へのルートは、先ほど、山頂直下の急登を登り切ったところにある分岐を下っていく東側のルートと、山頂から西側を下っていくルートの二つがあります。
今回は、西側のルートを下るコースを選択。
山頂から西側の登山道へ。すぐに急な下りが始まりますが、急なのはここだけ。この先は、それほど急なところはありませんでした。
10分弱で分岐に到着。直進すると、福泉寺のバス停に降りることができます。猿橋駅まで歩くより近いようですが、バスの本数が少なめなので、直接、猿橋駅へと降りてしまいます。ということで、この分岐を左へ。
少し下ると、南側が開けた場所に出ました。ベンチが置いてあるので、景色を眺めながら、小休止。
鳥沢駅~猿橋駅あたりの眺望が良いです。中央高速が真ん中を貫いています。奥のほうには中央本線の鉄橋も見えますね。
富士山もよく見えますが、かなり逆光ですね……。
比較的緩やかな下りが続きます。登山道も歩きやすく、この登山道で百蔵山に登るのであれば、初心者でも全く問題なさそうです。扇山、百蔵山ともに、それぞれの登山口から山頂までよりも、尾根伝いの縦走路のほうがキツかったですね。
下山を始めて約40分で水場があるところに到着。ここまでくれば、登山道はあと少し。
分岐。どちらに行っても猿橋駅に行けますが、右側は「近道」という魅力的なワードがあるので、こちらへ(笑)
5分ほどで登山道が終わり、車道へ。ここから猿橋駅までは30分ほどの車道歩きになります。
日本三奇橋のひとつ「猿橋」へ
トトロ?
急な舗装路を下って車道に出るたところに、百蔵山への道標がありました。その向こうには、百蔵山が大きく見えていますね。
しばらく車道を下っていくと、百蔵山登山口のバス停へ。この時間はバスが走っていないので、歩いて猿橋へ向かいます。
猿橋駅へ向かおうと思いましたが、次の電車にはぎりぎり間に合いそうにないので、1本遅らせて、その間に「猿橋」に寄り道することにしました。Googleマップに目的地「猿橋」をセットして、道案内をしてもらいます。
中央高速道路の下をくぐります。ちなみに、この上が、渋滞情報で有名な(?)「猿橋バス停」です。
「猿橋」に到着。猿橋は日本三大奇矯の一つだそうです。他の二つは、「岩国の錦帯橋」と「木曽の棧」だとか。
「猿橋」は桂川にかかる橋ですが、その最大の特徴は、橋脚を1本も使わない構造です。崖のような両岸から、「刎木(はねぎ)」と呼ばれる木をせり出して、橋を支えているのです。この刎木が4層になっていて、その上に橋げたが載っています。
隣の車道から猿橋を見てみると、その構造がよくわかりますね。桂川の谷がかなり深いのもわかると思います。
猿橋の上から桂川を覗き込んでみると、その高さに足がすくみます。
年末だからなのか、新型コロナウイルスの影響なのか、土曜日なのに観光客の姿は全くなし。猿橋の横にあるお店もすべて閉まっていました。
そろそろ電車の時間が迫ってきたので、猿橋駅へ向かいましょう。
猿橋駅へは、中央本線の橋をくぐって、南側の道路を歩いていきました。少し遠回りかもしれませんが、高台になっていて見晴らしが良いのです。今日、登ってきた扇山と百蔵山も一望!
電車の時刻の数分前に猿橋駅に到着。さすがに観光地の駅だけあって、無人駅の鳥沢駅よりも立派です。
ということで、登山はここまで。YAMAPの活動データによると、15.1km、累積標高は、上り1,304メートル、下り1,292メートルでした。
このあと、大月駅へ移動し、駅前のお店で乾杯! その後、特急かいじで帰宅しました。
晴天の日に登りたい扇山・百蔵山
今回は、秀麗富嶽十二景に定められている二つの山、扇山と百蔵山に登ってきました。低山ですし、危険なところも少ないですが、かなり歩きごたえのあるルートでした。
特に、扇山~百蔵山の縦走路は、登り返しがとてもキツイ! ただ、扇山、百蔵山それぞれを単体で登るのであれば、初心者でも問題ないと思います。
そして、何といっても、山頂からの富士山ビューは素晴らしいの一言! 冬の空気が澄んだ時期、そして、快晴の日を狙っての登山をおすすめします。
中央本線の鳥沢駅、猿橋駅から歩いて登れる山ですので、アクセスは抜群! その分、登山口まで車道を歩くことになるので、歩く距離は長めになります。
今回の登山装備
- メリノウールのインナー(モンベル)
- 長袖シャツ(ワークマン/Field Core)
- クリマプラス100 ジャケット(モンベル)
- トレッキングパンツ(モンベル)
- メリノウールのタイツ(ワークマン)
- 登山用靴下(FITS)
- トレッキングシューズ(AKU)
- ザック(グレゴリー ZULU30)
- レインウェア上下
- ウルトラライトダウンコンパクト(ユニクロ)
- 膝サポーター(ザムスト EK-3)
- トレッキングポール(シナノ)
- チェーンスパイク(モンベル)※使用せず
- スパッツ(モンベル)※使用せず
- お湯を入れたサーモボトル 750ml(モンベル)
- 飲み物(ペットボトル500ml×1本)
12月下旬でしたので、歩き始めはかなり寒かったですが、歩いているうちに気にならなくなりました。この日は風がほとんどなく、山頂で休んでいるときも、ダウンがいらないくらいの陽気に。
とはいえ、空気は冷たいので、風があるとかなり寒いと思います。風をよけられるシェルなどがあるとよさそうです。
雪や凍結している箇所があるかと思って、念のためにチェーンスパイクとスパッツを持ってきましたが、雪は全くありませんでした。ぬかるみもほとんどなく、快適に歩くことができました。
ただ、この時期は、低山でも雪が積もりますので、直前の山行記録などで登山道の様子を確認しておいたほうがよいと思います。
以上、「【秀麗富嶽十二景】富士山ビューの扇山~百蔵山を歩く! 低山ながら歩きごたえのあるルート!」でした。天候に恵まれ、穏やかな陽気の山頂で、素晴らしい富士山の眺めを堪能することができました。ぜひ、晴れの日に登って、富士山ビューを満喫していただけたらと思います。
コメント
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近々扇山~百蔵山の縦走をしようと思い、熟読させていただきました!
あ、少し前ですが三ツ峠山や平標山・仙ノ倉山も参考になりました。私のペースだと仙ノ倉山まで行くことができずひささんの健脚を実感しました!
扇山~百蔵山について質問なのですが、扇山→百蔵山の順にしたのは何か理由がありますか?
他のブログでも扇→百蔵山の順で縦走する人が多いイメージでした。
私は下りの急坂が苦手なので(三ツ峠山の霜山手前の急下降でもビビりました)百蔵→扇山の順番にして、扇山直下の急坂を下るよりも登りで利用するほうが安全?と思ったり、でもそうすると百蔵山直下の急坂を下ることになり、、、どっちの順が良いんだろうと迷います(^^;