憧れのパノラマ銀座を2泊3日の山小屋泊で縦走してきました。中房温泉から入り、燕岳~大天井岳~常念岳~蝶ヶ岳とつなぎ、上高地へと下山するコースです。槍ヶ岳や穂高連峰を目の前に眺めながらの山歩きは最高でした。大天井岳や常念岳の山頂からの大展望や、山小屋前での夕陽、ご来光も楽しむことができました。
この記事では、1日目に中房温泉をスタートして燕岳に登り、燕山荘に宿泊する様子をお届けします。
常念山脈の燕岳~蝶ヶ岳を歩くパノラマ銀座縦走へ!
今回歩いてきたパノラマ銀座は、常念山脈の燕岳~大天井岳~常念岳~蝶ヶ岳を歩くコースです。常念山脈は、槍ヶ岳や穂高連峰が連なる飛騨山脈の主稜線のすぐ東側に南北に延びています。お天気が良ければ、常に飛騨山脈の主稜線を眺めながら歩くことができる絶景コースなのです。
今回は、山小屋泊でパノラマ銀座の縦走を計画しました。
- 1日目: 中房温泉~燕山荘~燕岳~燕山荘(泊: 燕山荘)
- 2日目: 燕山荘~大天井岳~常念小屋(泊: 常念小屋)
- 3日目: 常念小屋~常念岳~蝶ヶ岳~徳沢~上高地
1日目が6.3km、2日目が11.1km、3日目が18.2kmと、後半ほど歩く距離が長くなる行程です。蝶ヶ岳ヒュッテでもう1泊するともう少し楽になりそうですが、徳沢~上高地の約7kmは平坦な遊歩道なので、何とかなるだろうと、この行程でチャレンジしました。
歩いてきた道のりは以下のとおりです。
3日間で35.8kmを歩くコースです。2泊3日の登山は何度か経験がありますが、いずれもベースキャンプ型のテント泊でした。3日間、稜線を縦走するのは今回が初めて。危険箇所はほとんどありませんが、体力はそれなりに必要なコースなので、少し緊張しました。
結果的には、お天気にも恵まれ、体力的にも大きな問題はありませんでした。1日目の燕岳への登りは、暑さで少しバテ気味でしたが、それ以外は順調に歩くことができました。
燕岳・常念岳・蝶ヶ岳登山口への公共交通機関でのアクセス
パノラマ銀座コースの主要な山の登山口への、公共交通機関でのアクセスを紹介します。
- 燕岳 中房温泉
- JR大糸線 穂高駅から安曇観光タクシー「中房線乗合バス」で約55分、終点の中房温泉で下車
- 運行期間は毎年4月下旬~11月上旬、運行日によって便数が異なる
- URL: https://www.azumikanko-taxi.co.jp/2011/04/030-01.html
燕岳の登山口となる中房温泉へは、JR大糸線の穂高駅からバスが出ています。穂高駅前には駐車場がありますので、電車・バス派の登山者だけでなく、マイカー派も利用するバスです。予約は不要で乗車できます。混雑時には臨時便も出るようです。
- 常念岳 一の沢登山口
- JR大糸線 穂高駅からタクシーで約35分(5,500円~6,000円程度)
常念岳の登山口となる一の沢登山口には、バスが走っていないため、穂高駅からタクシー利用となります。
- 常念岳・蝶ヶ岳 三股登山口
- JR大糸線 穂高駅からタクシーで約40分(6,000円~6,500円程度)
常念岳・蝶ヶ岳への登山口となる三股登山口もバスがありませんので、タクシー利用となります。
- 蝶ヶ岳 徳沢・横尾 登山口
- 徳沢: 上高地バスターミナルから徒歩約2時間
- 横尾: 上高地バスターミナルから徒歩約3時間
- 松本駅からアルピコ交通上高地線に乗車して新島々駅で下車、バスに乗り換えて上高地バスターミナルへ(約1時間45分、電車とバスあわせて2,710円)
- URL: https://www.alpico.co.jp/traffic/local/kamikochi/shinshimashima/
蝶ヶ岳へは、上高地側の徳沢と横尾にも登山口があります。上高地バスターミナルから徒歩約2~3時間と離れていますが、ほぼ平坦な遊歩道です。
燕岳側は中房温泉にバスでアクセスできるので問題ありません。一方、パノラマ銀座の南端となる蝶ヶ岳へは、安曇野側からの公共交通機関(バス)がありません。タクシーを利用するか、上高地側からアクセスするかのいずれかになります。
【合戦尾根】北アルプス三大急登の合戦尾根を登る!
登山口の中房温泉から、北アルプス三大急登の一つ、合戦尾根を登って、燕山荘を目指します。危険箇所はほとんどないですが、それなりの登りがずっと続きます。おおむね30分毎にベンチがありますし、登山道はよく整備されているので、ゆっくり休みながら登ります。
中房温泉からスタート!
前日は穂高駅近くのホテルに前泊。朝5時10分の穂高駅発の中房温泉行きのバスに乗車しました。バスは1台で補助席まで満席。途中から乗客は後続のタクシーを待つように言われていました。道路の関係か、比較的小さなバスでの運行でした。
午前6時過ぎに中房温泉に到着。ここで支度を整えて、合戦尾根に挑みます。
マイカーで来られた方も多いようで、大勢が準備をしていました。今日は燕岳に登るだけなので、ゆっくりと準備をします。トイレを済ませ、水を補給したら、いざ、出発です!
午前6時半過ぎに出発。最初から樹林帯の登りが続きます。「急登」というほどではなさそうですが、緩やかな登りというわけでもなく、それなりの登りがずっと続く印象です。平坦なところはほとんどありませんね。
30分毎に現れるベンチで休憩しながら合戦尾根を登る
7時10分頃、「第一ベンチ」に到着しました。まだ30分ちょっとしか登っていませんが、水分補給の休憩をとることにします。
それほどキツイわけではありませんが、とにかく蒸し暑い! まだ標高が低いうえに、樹林帯で風が通らないので、なかなかの暑さです。熱中症にならないように要注意です。
第一ベンチでは大勢の人が休憩していました。しかし、平日、しかも月曜日だというのにすごい人です。さすがに夏山シーズン、北アルプス人気の山ですね。最近は平日登山が多いのですが、ここまで人が多い登山道は久しぶりです。
第一ベンチ以降も、樹林帯の登りがひたすら続きます。急なところには階段が設置されていたりと、さすがによく整備されています。まあ、この階段なんか、かなり急なので、それなりにしんどいわけですが……。
登山道の脇に咲いている白いかわいらしいお花。イチヤクソウでしょうか? そうは見えないですが、ツツジの仲間なんだそうです。
序盤戦はひたすら樹林帯ですが、たまに登山道脇に咲いているお花を眺めながら登っていきます。
登山道脇に荷物運搬用のロープウェイの支柱がありました。中房温泉と合戦小屋を結んでいるそうで、合戦小屋名物のスイカはこれで運ばれているようです。スイカまではまだまだ遠いですが……。
第一ベンチから30分ほどで第二ベンチに到着。ここでも水分と行動食を補給していきます。ほぼ30分間隔でベンチがあるのはありがたいですね。休憩のタイミングがとてもつかみやすいです。
第三ベンチ、富士見ベンチを過ぎて花崗岩の登山道へ
第二ベンチを過ぎると、ところどころから稜線が見えるようになってきました。まだ午前8時過ぎなのに、もう山腹からガスが上がってきているようです。こういう景色が見えるところは、冷たい風が吹き込んできて涼しいです。景色を眺めながら、少しクールダウンします。
相変わらず登山道はよく整備されていますが、ところどころに急な階段もあります。
第二ベンチから再び30分ほどで第三ベンチに到着!
距離的にはようやく半分。標高は約2,000メートルで、標高差としては半分弱といったところでしょうか。中房温泉~燕山荘の標高差は1300メートル弱。これを5kmそこそこの距離で登るのですから、全体的にみればやはり急登といってもよいのでしょう。
標高が上がったせいか、登山道脇にもお花が少しずつ増えてきました。これはアキノキリンソウかな?
目線の高さまで完全に雲で覆われてしまいました。まだ8時半前ですが、雲が上がってくるのが早すぎます。それだけ猛暑だということなのでしょう。稜線からの絶景を楽しみにしてきましたが、どうなることやら……。
午前9時前、富士見ベンチに到着。富士見ベンチというくらいですから、富士山が見えるのかもしれません。が、見るのを忘れました(笑) あの雲の様子だと、たぶん無理でしょうけど……。
富士見ベンチのあたりから登山道の様子が少し変わってきました。土と石の道から、白っぽい砂礫の道へ。燕岳は花崗岩の山ですが、登山道も花崗岩が主体になってきたようです。白っぽくて明るいのはいいのですが、砂礫は滑りやすくて歩きにくいです。
合戦小屋でスイカ!
登山道脇に咲く黄色いお花。オトギリソウでしょうか?
少し傾斜が緩やかになってきて、「合戦小屋まであと10分」の標識が! 合戦小屋に到着したら、休憩していくことにしましょう。
午前9時半、合戦小屋に到着! 合戦小屋は、宿泊はやっていない休憩小屋です。名物はスイカとうどん!
大勢の人がスイカを食べていたので、それに抗えず(笑)、スイカを一切れ購入。500円です。甘くて瑞々しいスイカでした。水分&糖分補給にぴったりですね。生き返りました。
増えてきた高山植物を眺めながら燕山荘へ
合戦小屋から燕山荘までは1時間ちょっど。最後のひと登りといったところです。
標高が上がってきて、日が差すところも増えてきたので、高山植物が増えてきました。これはゴゼンタチバナ。
イワミツバ?
ハナニガナかな?
ハクサンフウロ。このお花は、稜線でもたくさん咲いていました。北アルプスの山には何度か登っていますが、高山植物真っ盛りの時期は初めて。色とりどりの高山植物を眺めながら登ると、ツラい登りも楽しくなりますね。
前方が開けてくると、燕山荘が見えてきました。建物がたくさん建っていて、大きな山小屋ですね。写真に写っている黒い点のようなものはトンボです。トンボがかなりたくさん飛んでいました。
燕山荘の直下はザレた岩場があります。難しくはありませんが、滑りやすいので注意しながら通過します。
テガタチドリ。紫色が鮮やかなお花です。稜線に近づくと、高山植物の種類も数も増えてきます。
燕山荘前からの絶景を満喫!
午前11時過ぎ、燕山荘前の稜線に到着! この稜線に出た瞬間、これまで全く見えなかった飛騨山脈主脈の山並みが目に飛び込んできます。この劇的な結末は感動もの!
少し目を左側(南側)へ移すと、槍ヶ岳も見えていました。登っている間にガスが上がってきていたので、眺望はどうかなと思っていましたが、常念山脈の稜線でガスが遮られて、その向こう側はまだきれいに見えていました。
この稜線に出たところが、燕山荘の目の前です。今日の宿、燕山荘に到着です!
燕山荘で水をもらい、ベンチに腰掛けて、絶景を眺めながらの行動食のおやつ。日差しは強いですが、風は心地よく、最高の気分です。
【燕岳】咲き乱れるコマクサを眺めながら山頂へ
ベンチで休憩したあとは、燕山荘にザックをデポして、一眼レフカメラとスマホだけ持って山頂へ向かいます。燕山荘から燕岳の山頂までは約30分。のんびりと歩いていきましょう。
合戦小屋あたりからご一緒させていただいたソロの年配の方と一緒に燕岳を目指します。
燕山荘から燕岳の斜面の砂礫地には、あらゆるところにコマクサが咲いています。白い花崗岩の砂礫に咲くピンク色のお花がとてもきれいです。
有名な「イルカ岩」。思ったよりもイルカでした。槍ヶ岳とともに。
見事なコマクサの群生地。このような群生地が、そこかしこにあります。夏の北アルプスは素晴らしいですね。
ハイマツ帯の中、ところどころに白いシャクナゲが咲いています。もう終わりかけのようです。ハクサンシャクナゲかな?
このあたりで見かけた一番大きなコマクサの株。
目の前に燕岳が近づいてきました。花崗岩の白い山体に、緑色のハイマツ帯、やや茶色かかった砂礫地の調和が美しい、本当にきれいな山です。「北アルプスの女王」と呼ばれるのも納得です。
最後はちょっとした岩場を登って、燕岳の山頂に到着! 山頂はとても狭いですが、先客が少なかったので、しばらく景色を眺めることができました。
安曇野側は雲で真っ白でしたが、反対側は雲が増えてきたもののよく見えました。槍ヶ岳もバッチリ!
燕山荘からここまで歩いてきた稜線です。安曇野側(左側)はガスが上がってきていますが、稜線でせき止められている様子がよくわかります。それにしてもきれいな山です。
後続の方が登ってこられたので、下山することにしましょう。
登るときは気がつかずに通り過ぎてしまった「めがね岩」。めがねといえばめがねですが、イルカ岩には及ばないかな。
ということで、午後1時頃に燕山荘に戻ってきました。
【燕山荘】人気No.1の山小屋に宿泊
この日は燕山荘に宿泊します。夏山シーズン真っ盛りとあって混雑していましたが、食事がおいしく、快適に過ごすことができました。山小屋とは思えないスタッフのおもてなしも素晴らしかったです。
燕山荘にチェックイン!
燕山荘にチェックインします。ちょうど登ってこられた方が多い時間帯だったのか、少し待ちましたが、問題なく受付と支払いを済ませます。明日の朝食をお弁当に変更してもらいました。
受付後、スタッフが一組ずつ寝床まで案内してくれます。まるで旅館のよう。山小屋でこんなサービスは初めてです。建物の構造が複雑なので、案内してもらわないと迷子になりそうではありますが……。
今晩の寝床は、屋根裏部屋のようなところ。二人ずつの壁で仕切られたところですが、隣に誰もいなかったので、とても快適に過ごすことができました。
昼食営業で生ビールとビーフカレー
荷物を寝床に置いたら、すぐに食堂へ。昼食営業が13時45分までということで、ぎりぎり間に合いました。もっとも、夜までやっている喫茶営業でもビールは飲めるようですが。
ということで、生ビールで乾杯!
お昼ご飯はビーフカレーを注文。このカレーも、スパイスが効いていて、とてもおいしかったです。
食後は、しばらく寝床で横になっていました。屋根裏部屋は遠いですが、この部屋に泊まる人しか来ないので、他の人の足音などを気にしなくて良いのは助かりました。
おいしいハンバーグの夕食は大満足!
夕食は3回に分けられていて、受付時に時間が決まります。私は17時からの回でしたので、その少し前に食堂の前へ。
受付で夕食券を渡して、テーブルに案内してもらいます。夕食はハンバーグ! 付け合わせや小鉢もたっぷりで、味、量ともに大満足でした。
ソロの場合は、ソロの人だけを集めたテーブルに案内されることが多いので、お隣の方と楽しくお話をしながら食事を楽しむことができました。
燕山荘前から稜線に沈む夕陽を眺める
夕食後は、カメラをもって外へ。夕陽を眺めに出かけます。といっても、燕山荘の前から見えるので、うろうろしながら写真を撮っていきます。
少しガスが晴れてきたので、燕岳もきれいに見えました。
夕陽を受けて赤く染まるコマクサ。
明日、歩く予定の稜線です。ここを歩けると思うとワクワクしますね。中央やや左の山頂に雲がかかっている山が大天井岳です。明日、登る予定です。常念山脈の最高峰ですね。
稜線付近に雲が多くてどうかなと思っていましたが、ちょうど雲が途切れたところに沈んでいく夕陽を眺めることができました。
山小屋に泊まる醍醐味の一つが、この夕陽ですね。日帰りではこの時間に山頂付近にいることは不可能ですから、山の中に泊まる人だけの特典です。
合戦尾根の登りは暑さとの戦い! 燕山荘の滞在は快適!
ということで、パノラマ銀座縦走の初日は、中房温泉から合戦尾根を登って燕岳まででした。
北アルプス三大急登の合戦尾根は、「急登」というほどの登りはほとんどありませんでしたが、まんべんなくそれなりの登りが続く道でした。約5.5kmで標高差1,300メートル近くを登るので、全般的に見れば急な登りです。
第一ベンチから富士見ベンチまで、短い間隔でベンチが整備されていますし、登山道も歩きやすいので、個人的には、キツイものの歩きやすいと感じました。ただ、この時期、暑さが大敵です。今回のパノラマ銀座縦走で、もっとも暑さに苦労したのが、この合戦尾根の登りでした。暑さ対策はしっかりしておいたほうがいいですね。
燕岳は「北アルプスの女王」と呼ばれる理由がよくわかります。白い山体にコマクサの花が咲く様子は、夏山ならではでしょうね。
夏山シーズン真っ盛りで燕山荘は混雑していましたが、それでもそれなりに快適に過ごせました。昼食営業、夕食ともに食事がおいしかったのも良かったですね。空いている時期ならば、さらに快適に過ごせそうです。空いている時期があるのかわかりませんが……。
2日目の燕山荘~大天井岳~常念小屋の縦走の様子は、以下の記事をご覧ください。パノラマ銀座のハイライトとなる絶景稜線歩きを楽しみました。
以上、「【パノラマ銀座縦走1】燕岳~蝶ヶ岳を2泊3日の山小屋泊で縦走! ~中房温泉からコマクサ咲き誇る北アルプスの女王 燕岳へ~」でした。合戦尾根の登りはなかなかキツいですが、登り切って稜線に出たときに目に飛び込んでくる絶景は感動ものです!
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